イメージ写真_管理栄養士_赤石定典先生

免疫力アップに役立つ栄養のとり方

『疲れ知らずで病気にならない 名医が教える科学的に正しい食べ合わせ』(KADOKAWA)などの書籍監修やメディア出演で、患者さんへの栄養管理や栄養の重要性を広く伝えている管理栄養士の赤石定典先生。今回は「免疫力アップに役立つ栄養のとり方」についてお話を伺いました。

Q1 食べ物で免疫力を高めるために大切なことは何ですか。

体の免疫細胞は7割が腸に存在しているといわれていますから、まずは善玉菌と悪玉菌のバランスを意識して、腸内環境を整えることが大切です。腸内細菌は、悪玉菌1に対して善玉菌2、残りの7割がどっちつかずの日和見菌という状態が理想です

日和見菌を味方につけ、善玉菌を優位に保つためには、善玉菌や善玉菌のエサになるものをしっかりととる必要があります。おすすめの食材は発酵食品ですね。たとえば納豆。味付けにキムチを使えば、ダブルで発酵食品を取ることができます。

善玉菌のひとつとして知られる乳酸菌の代名詞になっているのがヨーグルトです。ヨーグルトに含まれる動物性の乳酸菌は胃酸で死んでしまうことが多いため『生きたまま腸に届く』というのは難しいのですが、死んでしまった菌でも、腸に届けば善玉菌のエサになります。

オリゴ糖やはちみつも善玉菌を増やしてくれるので、ヨーグルトに甘さを足したいときは砂糖よりもおすすめです。また、バナナやキウイフルーツなどの果物には善玉菌のエサとなる食物繊維が入っていますから、ヨーグルトにプラスして食べれば、善玉菌と善玉菌のエサになるものを一緒にとることができます。

食物繊維の中でも善玉菌にとって特に有用であるという研究が行われているのが大麦のβグルカンやゴボウのイヌリンなど、発酵性食物繊維と呼ばれているものです。発酵性食物繊維はキウイフルーツにも多く含まれています」

Q2 発酵食品や食物繊維のほかにも、免疫力の向上に役立つ食材はありますか。

体内の活性酸素が過剰になると免疫の力も落ちてきますから、ポリフェノールなどの抗酸化成分もとるようにしたいですね。ポリフェノールはナスやゴボウなどの野菜の皮にも含まれているので、野菜はできれば皮も食べるようにするとよいと思います。変色の防止やアク抜きのためにナスやゴボウを水にさらすとポリフェノールが流れ出てしまうため、野菜は皮のまま洗い、切ったら水につけないことがポイントです。

抗酸化ビタミンといわれているビタミンエース(ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE)にも抗酸化作用がありますし、きのこには免疫細胞のひとつであるナチュラルキラー細胞を活性化する成分も含まれています。結局のところ、いろいろな食材をもれなく食べることが大切です

Q3 食材をまとめ買いしたときに、上手に保存する方法を教えてください。

「買い物の回数を減らすために3日分ぐらいの食材をまとめて買ってくることもあると思いますが、3日もたてば野菜のビタミンCは半分ぐらいになってしまいます。ですから、すぐに使わない分は食べやすい大きさに切って冷凍するとよいと思います

さらによい保存方法は発酵です。野菜ならヨーグルトみそがおすすめです。ヨーグルトとみそを1:1で合わせて、お好みの野菜をぬか漬けのようにしてジップタイプの袋に入れ、冷蔵庫で1日おけばおいしく食べることができます。さらにもう一つ活用したいのが発酵食品であるお酢ですね。酢漬けにすれば保存もしやすいですし、酢の物をちょっと食卓におくだけでも、手軽にお酢という発酵食品をとることができます

Q4 冷凍食品やインスタント食品を利用する際は、どのようなことに気をつければよいでしょうか。

「まず、冷凍食品とインスタント食品は全く違います。冷凍食品は技術が進み、今はとれたての食材がすぐに冷凍されていますから、時間がたった生の食材よりも栄養価が高い場合もあるんです。一方で各種リン酸塩などの食品添加物が含まれているインスタント食品は、多くとり過ぎると骨を弱くしてしまう可能性があります。

とはいえ、やむを得ずカップ麺などを食べることもあると思います。その場合は野菜をトッピングするとよいでしょう。それこそ、冷凍野菜でもいいんですよ。生の食材を切って準備するより、カップ麺と一緒に冷凍野菜を買ってきて入れるほうが楽ですし、コンビニエンスストアでサラダを買うよりも安くすみます。
インスタント食品を多く食べていると、塩分のとり過ぎも心配です。カップ麺なら、汁を残すことがポイントになります。スープの袋が別になっているものであれば、スープとお湯をそれぞれ半分にして減塩することもできます。

また、ラーメンはお酢を入れて食べるのもおすすめです。毎日大さじ1杯(約15ml)のお酢を摂ると、肥満気味の方の内臓脂肪を減らす働きや、食後の血糖値の上昇を緩やかにする働きがあるほか、高めの血圧も緩和してくれます。甘い調味料は血糖値が心配になりますし、しょっぱい調味料は血圧が気になりますが、お酢は血糖値にも血圧にもよい働きをしてくれる最強の調味料といえます。これを使わない手はないと思います」

Q5 おすすめのお酢のとり方を教えてください。

「お酢は何にでも使えます。納豆にお酢をかけても合いますし、焼酎やハイボールなど、飲み物にお酢を入れるのもおすすめです。今はさまざまなお酢が出ていますから、料理に合わせてお酢を選ぶのもいいですね。お酢の酸っぱさが苦手という方であれば、まろやなお酢を使うのも一つの手です。フルーツ酢は食べやすいですし、デザートにかけてもおいしいですよ」

文/木村 恵理

監修:東京慈恵会医科大学附属病院 栄養部係長 管理栄養士 赤石定典先生

1991年華学園栄養専門学校卒業後、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部入職。分院を経て、2014年附属病院へ異動、現在に至る。『疲れ知らずで病気にならない 名医が教える科学的に正しい食べ合わせ』(KADOKAWA)などの書籍監修やメディア出演で、患者さんへの栄養管理や栄養の重要性を広く伝えている。