Q1 巣ごもり生活の中で、積極的に使いたい食材はありますか。
「家にこもる時間が増え外に出る機会が減ると、運動する時間や日を浴びる時間が少なくなりビタミンDが不足してくれば、骨粗しょう症も気になります。そんなときに使いたい食材は、ビタミンDとカルシウムがとれるしらす干しや、今が旬の桜えびなどです。カルシウムと、カルシウムの吸収を助けるビタミンDを意識すると、骨の健康を保ちやすくなると思います。
葉物野菜でも、ケールや小松菜には牛乳よりも多くのカルシウムが含まれています。たとえばケールやパクチーなどお好みの葉物野菜に小えびを合わせ、ナンプラーか醤油、ごま油、お酢を加えるだけでもおいしく食べられます。小えびがなければ、えびせんをくだいて代用するのもおすすめです」
Q2 上手にカルシウムがとれる料理を教えてください。
「小アジなどの南蛮漬けは小魚を骨ごと食べることができるので、カルシウムをとるのにおすすめです。サバ缶で作ってもおいしいですよ。骨にはカルシウムがありますが、だからといって鶏手羽を骨ごとバリバリ食べるわけにはいきません。でもお酢をたっぷり入れてちょっと煮込めば、骨に含まれているカルシウムやコラーゲンを取り出すことができます。
あさりやしじみなどの貝殻にもカルシウムが豊富です。みそ汁でも、片手鍋ぐらいの量にりんご酢を小さじ1、2杯入れると、汁に溶け出たカルシウムまでとることができます。
カルシウムなどのミネラルは、酸に溶けやすい性質があります。そこをうまく利用するには、お酢を使うのが一番身近で手っ取り早いのではないでしょうか。お酢には腸管でのカルシウム吸収を助ける働きもありますから一石二鳥です」
Q3 運動不足が気になるときの食事は、どのような点に気をつければよいでしょうか。
「動く機会が減ると筋力が落ちてきますが、筋肉のもとになるたんぱく質をしっかりととれば筋力の低下を抑えることができます。きちんとたんぱく質を摂取することによって、高齢の方でも筋肉量を保つことが可能となり、フレイル予防にもよいとされています。
気をつけてもらいたいのは、たんぱく質は1回に吸収できる量が限られてしまうため、1食でまとめてとるのではなく、3食それぞれでとる必要があるという点です。肉、魚、卵、乳製品、大豆。この5種類の食べ物から1食につき100gを目安に食べれば、たんぱく質としての必要量である20gから30gをとることができます。
たとえば納豆1パックは約40gですから、卵1個を足すといいでしょう。お肉やお魚であれば、やや大きめの1切れで補うことができます。一方、コンビニエンスストアでよく見かけるおにぎり2個にお茶1杯というような食事ではたんぱく質が足りませんから、温泉卵や枝豆、サラダチキン、缶詰などをプラスしてほしいと思います。飲み物も、ブラックコーヒーではなくカフェオレやソイラテを選ぶようにすれば、たんぱく質の摂取量を増やすことができます」
Q4 食べる順番に関して、意識したほうがよいことはありますか。
「成人では、糖質のとり過ぎで血糖値が上がってしまう方も多いので、野菜を先に食べるベジファーストを心がけると、野菜の食物繊維が糖質の吸収を抑えてくれます。加えて、血糖値の上昇を抑えてくれるお酢をとるのもおすすめです。
一方、育ちざかりの子どもや痩せている高齢者の場合、優先したいのはたんぱく質です。成人と同じようにベジファーストにしてしまうと、野菜を食べているうちにおなかがいっぱいになってしまい、とりたい栄養がとれなくなってしまうためおすすめできません。
子どもには、ごはんとおかずを一緒に食べることができてたんぱく質もとれるどんぶりメニューもよいかもしれません。ただ、どんぶりはごはんが多過ぎたり、よくかまないまま飲み込むように食べてしまったりしやすいので、成人にはあまり向いているとはいえません」
Q5 おうちでの生活を健康的に過ごすためのアドバイスをお願いします。
「まずはいろんなものをしっかり食べるということ。それから、大事なのは休養です。不安で眠れないという方は、軽い運動をすることで寝付きがよくなります。また、神経を落ち着かせてくれるGABAが入った食材をとるのもよいと思います。白みそには、赤みそよりも多くのGABAが含まれていますから、夜は白みそにするというのもおすすめです。
家にこもりがちだとストレスもたまりやすいかもしれませんが、ストレスがたまると免疫の力も下がってきます。テレビでお笑い番組や映画を見たりして喜怒哀楽の感情を出し、ストレスをためない工夫をしていくことも重要ではないでしょうか。
家族といる時間があるのなら、一緒に食卓を囲んで会話しながら食事をするのもいいですね。同じ料理でも雰囲気によって味は全く違ってきますし、笑顔になれば免疫力も高まります。健康的に過ごすためにはしっかり食べることが大事ですが、一番はやはり、おいしく楽しく食べてもらうことかなと思います」
文/木村 恵理
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