生活習慣病の予防に役立つお酢の働き

在宅勤務の増加や外出機会の減少で体を動かす機会が少なくなり、生活習慣病のリスクが高まっています。生活習慣病の予防に役立つ、お酢の健康バランスを整える働きについて、お酢に詳しい東京農業大学名誉教授の小泉幸道先生にうかがいました。

Q1 お酢にはさまざまな健康効果が期待できるそうですが、特に興味深いと思われるのはお酢のどのような働きでしょうか。

「お酢には、血圧上昇に関わるホルモン調節機構(レニン・アンジオテンシン系)を穏やかに抑制する働きがあることが動物実験の結果からわかっており※1、ヒトを対象とした研究でも大さじ1杯のお酢を毎日摂ることで、高めの血圧を下げる効果があることが確認されています※2。なお正常な血圧の方が毎日お酢をとっても、血圧が下がりすぎる心配はありません。

年齢が高くなってくると、高血圧で悩む方も増えてくると思います。高めの血圧を下げるお酢の働きは、多くの方にとっても興味深いものではないでしょうか。

さらにお酢には、血流を改善することにより血圧を下げる作用も期待できます。これは、お酢が体内で代謝されるときにできるアデノシンの作用で血管が広がるためだと考えられています※3」

Q2 血圧が高い方におすすめのレシピはありますか。

「血圧が高めの方には酢納豆がおすすめです。大豆は、血管を拡張させて血圧を下げるマグネシウム、塩分を体外に排出するカリウム、血管の老化を防ぐポリフェノールが豊富で、納豆には、血管内の血栓を溶解し動脈硬化を予防するナットウキナーゼも含まれています。

納豆に加えるお酢の量は1パックあたり小さじ2がおすすめですが、お酢が苦手な方は小さじ1でもよいでしょう。お酢を入れることで納豆のネバ切れがよくなり、ふわふわで食べやすくなります。

また、酢しょうがもおすすめです。よく洗った3かけ分のショウガを皮ごと薄切りにして保存容器に入れ、お好みのお酢カップ1とはちみつ大さじ1をよく混ぜて注ぎ、冷蔵庫で一晩おくだけ。冷蔵で約2週間保存できます。

ショウガに含まれる辛み成分のジンゲロールと香り成分のガラノラクトンには血管を拡張させる働きがあり、お酢とショウガは血行改善にぴったりの組み合わせです。これらの成分は皮の近くに多く含まれていますので、ショウガは皮ごと使ってください」

Q3 その他の生活習慣病予防に役立つお酢の働きについても教えてください。

「大さじ1杯のお酢を食事と一緒に摂ると、食後の血糖値上昇が緩やかになることもわかっています※4。お酢によって、胃の消化物が小腸に届くまでの流れがゆっくりになるため、急激な血糖値の上昇が抑えられるのだと考えられています※5。

満腹中枢が血糖値の上昇を感知するまでには約15分かかるといわれていますので、血糖値の上昇を抑えるためには、15分以上かけて食事をすることも大切です。最近は短時間で流し込むように食べる方も多いようですが、かむ回数を増やしゆっくり食べることを意識してください。一人で食べると早食いになりがちですから、外出が減り家族そろって自宅で食べる機会が増えたのはよいことかもしれません。

他には、肥満気味の方が12週間毎日大さじ1杯のお酢を摂取したところ、内臓脂肪、体重、腹囲、BMI、血中中性脂肪が減少したことも報告されています※6。食生活の中に上手にお酢を取り入れて、生活習慣病の予防に役立てたいですね」

Q4 お酢のチカラを生かして健康的な毎日を過ごすためのポイントはありますか。

「大さじ1杯のお酢を毎日摂ることで健康によい効果が期待できますが、その効果はお酢の摂取をやめると得られなくなってしまいます。ですから毎日摂り続けるようにしてください。摂り方は、料理に使っても飲み物にしてもよいでしょう。ただしお酢を飲む場合は必ず5~8倍に薄めてください。原液をそのまま飲むと胃の粘膜や食道が荒れる原因になります。

またお酢の健康効果には、普段の食事内容や食事量の他、運動量も大きく影響します。適度な運動をして規則正しい生活を送り、栄養バランスの良い食事を心がけることが何よりも大切です」

Q5 その他、健康維持に役立つお酢のおすすめの摂り方を教えてください。

「たとえば酢トマトですね。トマトには強い抗酸化作用を持つリコピンやビタミンC、ビタミンEなどが含まれており、同じく抗酸化作用をもつクエン酸を含むお酢と一緒に摂ることで血管の老化防止が期待できます。

作り方は、トマト中2個をざく切りにして保存容器に入れ、リンゴ酢1カップとはちみつ大さじ1をよく混ぜて注ぎ、冷蔵庫で2時間以上おけば完成です。保存の目安は約3日間。もっと簡単な方法としては、トマトジュースにお酢を入れて飲むのもおすすめです。

飲み物なら、グラスにリンゴ酢大さじ1を入れ、100%オレンジジュース120mlを注ぎ、はちみつ大さじ1を入れてよく混ぜて作る酢オレンジジュースもおすすめです。はちみつは入れなくても構いませんが、入れると酸味が緩和されコクが出て、味わい深い一杯になりますよ」

  • ※1 Kondo S et al, Biosci Biotechnol Biochem., 65(12), 2690-2694(2001)
  • ※2 「食酢配合飲料の正常高値血圧者および軽症高血圧者に対する降圧効果」(健康・栄養食品研究 6(1):51-68 2003)
  • ※3 F.J.Carmichael et al, Am.J.Physiol., 255, G417-G423 (1988)
  • ※4 「健常な女性における食酢の食後血糖値上昇抑制効果」(日本臨床栄養学会雑誌 27:321-325 2006)
  • ※5 Liljeberg H et al, European Journal of Clinical Nutrition, 52, 368-371(1998)
  • ※6 Kondo T et al, Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 73(8), 1837-1843(2009)

撮影/梁瀬岳志
文/木村恵理

東京農業大学名誉教授 小泉幸道先生

1973年東京農業大学農学部醸造学科卒業。1997年東京農業大学教授に就任。専門は発酵食品学、醸造学(酢)で、40年以上にわたり食酢の研究を行ってきた。お酢に関する著書、監修書は多数に上り、「お酢博士」としてテレビ等でも活躍中。

記事の一覧を見る