イメージ写真_新鮮な野菜

旬の食材をおいしくいただく方法

テレビや雑誌などで広く活躍されている管理栄養士で医学博士の本多京子先生。今回は、旬の食材をおいしくいただく方法についてお話を伺いました。

Q1「旬」の野菜を食べると良いといわれているのは、なぜでしょうか。

昔から『春苦味、夏は酢の物、秋辛味、冬は油と合点して食え』といいますが、春野菜って苦味のあるものが多いんですよ。暖かくなってくると、冬の間眠っていた虫が活発に動き出して、育ってきた野菜を食べてしまう。植物は虫に食べられないようにするために、自分で苦味をつくるんです。だから、春の野菜にはクロロゲン酸のような苦味成分を作るものがたくさんあります。

夏になれば、今度は気温が高くなり紫外線も強くなります。強い紫外線を浴びて遺伝子を損じれば、野菜も生きていくことができません。そこで、カロテノイドのような色素成分をつくって自分自身を守るのです。

植物は、このように季節に合った生き方をしています。人間も同じ環境の中で暮らしているわけですから、旬のものを食べるということは、自然の野菜や果物がその季節を生き抜いていくためにつくりだした成分を分けてもらうことになるんです。旬の野菜や果物を食べる意味というのは、そこにあるんですよ。

旬といっても、今は地球レベルで食べ物が行き来しているので、もう少し大きな範囲で考えてみることも必要です。たとえばカボチャは夏が旬ですが、冬にはニュージーランドで旬を迎えたカボチャが日本に来ています。もちろん、運ぶエネルギーが少なくて済む地元の野菜が一番良いのですが、今の時代はどこでできた野菜なのかを考慮することも大切なのかもしれません」

Q2「旬」の食材とお酢を使った初夏にぴったりのレシピを教えてください。

これから夏に向かうにつれて、パプリカが安くなってきます。これを乱切りにして、タマネギのスライスとともに、白だしを入れたお酢に2〜3時間漬けておけば、いろいろなお料理に使うことができます。

タマネギだけでもおいしいのですが、使い切れずに余っていたパプリカを入れれば見た目がカラフルになってぜいたく感が出ますし、タマネギにはないビタミン類をプラスすることもできます。食事を作る時間がないときでも、冷凍のから揚げを温めてこれと合わせれば、簡単に主菜ができあがります。アジフライにかけてもおいしいですよ」

たまねぎとパプリカのだし酢和え

材 料

  • たまねぎ(うす切り)……100g
  • パプリカ(赤・黄合わせて)……30g
  • 白だし……大さじ1(15g)
  • 米酢……大さじ1(15g)

Q3 ほかにも夏におすすめのレシピはありますか。

もう一つおすすめしたいのは『みぞれ酢』です。こちらはタマネギとニンジンをすりおろしてお酢と合わせます。

すりおろすと、スライスしたときよりも野菜の甘みが感じられますし、タマネギは細胞組織を壊して空気にさらしたり酢に漬けたりすることによって、有効成分のアリル化合物が生成されやすくなります。セロリやカブなど余っている野菜があれば、それもすりおろして足すと、残り野菜を捨てることなく使い切ることにもつながります。

夏であれば、ナスやズッキーニ、ピーマン、パプリカなどの夏野菜をフライパンで焼いて、このみぞれ酢をかけると、味がなじんでおいしく食べることができます」

たまねぎとにんじんのみぞれ酢

材料

  • たまねぎ(すりおろし)……70g
  • にんじん (すりおろし)……30g
  • 生姜(すりおろし)……小さじ1
  • すし酢……100ml

Q4 さっぱりとしていてドレッシングにも良さそうですね。

「そうですね。みぞれ酢にオリーブオイルやごま油のような香りが強めの油を少し混ぜれば、それだけでとろりとしたドレッシングになりますよ。

低カロリーをうたうノンオイルドレッシングはとろみが少ないためからみにくいのですが、このドレッシングなら、夏のレタスやキュウリで作ったシンプルな野菜サラダにもよくからんでおいしい上に、低カロリーです。

みぞれ酢は、油のかわりにめんつゆや白だしを足して和風にすると、冷ややっこにもよく合います。輪切りや乱切りにしたトマトにかけるだけでも、一品のお料理になりますよ」

本多先生

白ナスをオリーブ油でローズマリー風味に焼いたものにかけて食べてみました! 夏向きメニューでおすすめです。

文/木村 恵理

監修:管理栄養士・医学博士 本多京子先生

実践女子大学家政学部食物学科卒業後、早稲田大学教育学部体育生理学教室研究員を経て、東京医科大学で医学博士号を取得。テレビや雑誌、新聞、講演などで提案するレシピや健康と栄養についてのアドバイスには定評があり、スポーツ選手に対する栄養指導の経験も豊富。食に関する著書は60冊以上。