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熱中症対策とお酢について

在宅訪問管理栄養士として在宅療養者の食生活の支援を行いながら、健康栄養教室などの講師としてもご活躍されている塩野崎淳子先生に「熱中症対策とお酢」についてお話を伺いました。

Q1 熱中症対策として、特に注意すべきことは何ですか。

「基本中の基本は、3食しっかり食べることです。私たちは3度の食事から1日に約1.5リットルの水分を摂っていますが、朝食を食べなければ、その水分の3分の1が摂れないまま過ごすことになります。

栄養指導で訪問したお宅でも、食事が取れていないことで熱中症につながってしまったと思われるケースが多くありました。しっかり食事を取ることが熱中症対策の第一歩だと思います」

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Q2 毎⽇の⾷事ではどのようなことに気をつければよいでしょうか。

「糖質制限がはやっていますが、糖質が不足すれば活動するためのエネルギーも不足してしまいます。

主食から摂れる水分も多いので、ごはんならお茶わん1杯、麺類なら半玉は食べてもらいたいですね。さらに、両手1杯の生野菜、加熱した野菜ならその半分を毎食摂るのが理想ですが、難しいときもあると思います。カップ麺を食べた日があったとしても、次の日の食事で頑張ればいいんですよ。

そのときに大切なのは品数ではなく、必要な野菜と、ごはんやパンなどの炭水化物、たんぱく源となる肉や魚があること。必要以上に品数を増やしても、塩分や脂質の摂取量まで増えてしまいます。

厚生労働省の『日本人の食事摂取基準2020年版』によれば、減塩の目標量がさらに引き下げられました。高血圧や腎臓病などの生活習慣病の予防のために、減塩は現代の日本人にとって重要なテーマのひとつです。減塩と聞くと難しく思う方もいらっしゃいますが、そんなときはお酢を上手に使ってみることをおすすめしています。

例えば、餃子につけるしょうゆを『香りづけ程度』に減らした酢じょうゆに置き換えるだけでも減塩になります。黒こしょうたっぷり加えれば、薄味も気になりません」

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Q3 ⾷欲がないときでも上⼿に栄養を摂るには、どのような方法がありますか。

「食欲がないときに優先して摂りたいのは水分です。その次に糖質、それからたんぱく質。

私が好きなのは、酸辣湯(サンラータン)麺です。調理の際にお酢を加えますが、食べる直前にも香酢やお酢をかけるとコクが出てさらにおいしくなります。冷やした酸辣湯にゆでたそうめんを入れてもおいしく食べられますよ。食べ物が喉を通らないときでも麺やスープなら食べやすいのでおすすめです。

また梅やレモンを使ったり、お酢で酸味を加えたりすると、食欲が増すことがあります。私の家ではほうれん草や大根おろしなど何にでもぽん酢をかけて食べていますし、鶏手羽元のぽん酢煮もよく作ります」

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Q4 お酢を使ったおすすめのレシピを教えてください。

「しょうゆ大さじ2/3、お酢大さじ1、ごま油小さじ1/2、すりおろしショウガとニンニク、すりゴマで作る自家製中華ドレッシングがおすすめです。ゆでた野菜にツナ缶やきざみのりを加えてあえるとおいしいですよ。

さわやかな柑橘系の香りが特徴のオレンジビネガーと、オリーブオイル、塩・こしょうを混ぜたドレッシングも、ゆでたキャベツとあえるだけでおいしいです。果物のお酢は風味もよいので、酸味が苦手なお子さんでも食べやすいのではないでしょうか。

【オレンジビネガードレッシング】
・塩小さじ1/4強(全材料の0.8%)
・オレンジビネガー 大さじ1
・オリーブオイル 大さじ2
・黒こしょう 好みで

ただ、高齢で飲み込む機能が落ちている方の場合は、酸味でむせてしまうことがあるのでお酢は慎重に使います。

以前、嚥下障害のある方が『エビチリが食べたい』とおっしゃったので、エビのムースに甘酢あんをかけて召し上がっていただきました。甘酢あんはレンジでしっかり加熱し、酸味を飛ばしつつもお酢の風味は残るように工夫しました。その方は一口味わうと『これはエビチリだ!』と目を丸くして見たことのない笑顔を見せてくれました」

Q5 熱中症対策において、⼦どもや高齢者が特に気をつけるべきことはありますか。

「子どもは体液の割合が大人より多い(70~80%)のに、脱水症になりやすいです。その理由として、喉のかわきに気付きにくかったり、発汗が多く水分の出入りが激しかったりするため自分で気を付けながらこまめに水分摂取することができないなどの理由があります。

高齢者も、喉がかわく感覚が感じにくく水分が摂れていない方もいますので、周りの方が気にかけてあげてほしいと思います。水やお茶を好まない方には、りんご酢などを水に溶かして蜂蜜を少し入れるなど酸味や甘みを足すと、好んで飲まれることがあります。

暑さが厳しいと家に引きこもりがちになり、近所の人とお茶を飲む機会も少なくなりますが、人との関わりも水分や食事の摂取量に影響を与えるんですよ。そういう面でも、自然にお茶が欲しくなるようなお茶菓子を食べながら高齢の方々が話をするのは、よいことなのかなと思います」

文/木村 恵理

監修:在宅訪問管理栄養士 塩野崎淳子先生

2001年女子栄養大学栄養学部卒。長期療養型病院勤務を経て、訪問看護ステーション併設の居宅介護支援事業所で介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援に携わる。現在は、訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術・WOCクリニック内)を拠点に「寄り添う食支援」を行っている。