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お酢を使ったノンアルコールカクテルで健康に

お酒の代わりに楽しめるノンアルコール飲料がブームとなっています。中でもお酒の代わりにお酢をベースにしたノンアルコールカクテルの可能性について、臨床医で薬理学の研究者でもある下村健寿先生に伺いました。

Q1 「お酒の飲み過ぎ」は健康にどのような影響があるのでしょうか。

イメージ写真_寝転がってお酒を飲んだりお菓子を食べたり

「お酒は、適度なストレス解消になるので、少量であれば、むしろ健康に良いと思います。ただし、飲み過ぎは禁物です。アルコールには胃の働きや腸の蠕動運動を促す作用があるため食欲が増進し、肉や揚げ物など油っこいものでもつい食べ過ぎてしまいがちです。また、動物実験によってアルコールは満腹中枢を麻痺させることがわかっています(※1)。

飲み会の後に「締めのラーメン」を食べることもよくありますが、お酒を飲んでいなければ、さんざん食べたあとにまたラーメンを食べることはとてもできません。すでに満腹なのにアルコールの作用で必要以上に食べ過ぎてしまうのです。

さらに、私たちの体は寝ている間は血糖値を高めに保つようにできています。そんな状態で寝る前にラーメンを食べたら、さらに血糖値が上がり、食べたものが脂肪になりやすい状態になってしまいます。このように「食べ過ぎ」を引き起こすのがお酒の怖いところです。私が糖尿病や肥満の患者さんに“お酒は最初の1杯だけにして、それ以上は控えましょう”と指導しているのはこのためです。

とはいえ、お酒が好きな人は最初の1杯だけではちょっと寂しいですよね。どうしても2杯目が欲しくなるものです。私もお酒が好きなのでよくわかります。そこで、2杯目以降におすすめしたいのが、お酒ではなくて、お酢のノンアルコールカクテルです」

Q2 お酢がお酒の代わりになるとしたら、どんな生理学的メカニズムが考えられますか。

「お酢のドリンクを飲むと、体がポカポカと温まってくる感じがする人がいるようです。

血圧が高めの男女に食酢約15ml(酢酸750mg)を含む飲料を1日1本(100ml)、10週間毎朝続けて摂取してもらったところ、食酢を含む飲料を摂った多くの人の血圧が低下したという実験結果があります(※2)。血圧が下がるのは、お酢の酢酸に血管を拡張させる作用があるためと考えられます。

実験結果から、お酢のノンアルコールカクテルを飲むと、アルコールを摂取したときのように体がポカポカする感じがするのは、血管拡張によって血流がよくなることで感じる心地よさなのかもしれません。そのため、お酒が好きな人にもお酢のノンアルコールカクテルは受け入れやすいかと思います」

イメージ写真_コップに入ったお酢カクテルとピンクグレープフルーツ

Q3 お酢を使ったノンアルコールカクテルには、ほかに期待できる健康効果はありますか。

「動物実験により、お酢には脂肪の代謝を上げる機能があると報告されています(※3)。また人による実験でも、大さじ1杯(約15ml)の食酢を、毎日12週間飲み続けた場合、多くの人が、体重、体脂肪、腹囲、BMI、血中中性脂肪が減少するという結果が出ています(※4)。

糖質が分解されてできたブドウ糖は、すい臓から出るインスリンの働きで、グリコーゲンになって筋肉や肝臓に蓄積され、エネルギー源となります。ところが、食べ過ぎなどで糖質を摂り過ぎると、ブドウ糖が筋肉や肝臓に貯蔵できなくなり、脂肪細胞に運んで蓄えさせます。その繰り返しが肥満に繋がります。

一方お酢には、糖質の利用を促してスムーズにエネルギーへ変える働きがあります。糖質が脂肪に代わるのを防ぐため中性脂肪も下がり、血糖値もうまくコントロールされるようになります。さらにお酢は、できてしまった脂肪細胞も分解してくれるので、やせる効果も期待できます。ただ、データによればこの効果は毎日15ml摂取した場合です。

ですが、お酢はすっぱいためそのままは飲みづらいですよね。そこで、いつも飲んでいるお酒をお酢のノンアルコールカクテルにすれば、無理なくおいしく摂れるのではないかと思います」

Q4 お酢を飲む効果をより高めるためにできることはありますか。

イメージ写真_健康を意識した女性二人がウォーキング

「お酢を摂ると、骨格筋のミオグロビンというたんぱく質が増えることが報告されています(※5)。また、ミオグロビンは筋肉の収縮時の酸素運搬の役割を担っており、ミオグロビンが増えることで脂質代謝が促されると考えられます。

さらに、お酢を摂ることで、運動時に骨格筋で糖質を取り込む働きをするグルット4というたんぱく質も増え(※5)、効率的に糖質をエネルギーとして使うといった相乗効果も期待できます。

そのため、お酢の毎日の摂取とともに、ぜひ運動を習慣にしていただきたいですね。

ちなみに、運動するタイミングは、血糖値が高めの方は食後がおすすめです。食後、血糖値が上昇する前に運動してブドウ糖を消費すれば、血糖値スパイク(急上昇)を防げます。またダイエットには、食前の運動がいいでしょう。血糖値が低い状態のときのほうが、脂肪をエネルギーとして使えます。とは言うものの、お酢を飲んでいれば脂肪や糖の代謝がよい状態になっていることが期待できます。いつ運動しても運動の効果が高まる可能性があります。

お酒のノンアルコールカクテルは、お酒を飲む人の2杯目の飲み物としてもいいですし、お酢によるプラスアルファの効果も期待できます。お酒を飲む、飲まないにかかわらず、日常的なドリンクとしてよい選択肢になるでしょう」

参考文献:
1)「Agrp neuron activity is required for alcohol-induced overeating」(Nature Communications 8:14014 2017)
2)「食酢配合飲料の正常高値血圧者および軽症高血圧者に対する降圧効果」(健康・栄養食品研究 6(1):51-68 2003)
3)「Improvement of obesity and glucose tolerance by acetate in type 2 diabetic Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF) rats.」( Biosci Biotech Biochem 71: 1236-1243 2007)
4)「Vinegar intake reduces body weight, body fat mass, and serum triglyceride levels in obese Japanese subjects」(Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 73(8):1837-1843 2009)
5)「Effects of acetate on lipid metabolism in muscle and adipose tissue of type 2 diabetic Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF) rats.」(Biosci Biotechnol Biochem 73: 570-576 2007)

文/高橋 裕子

監修:福島県立医科大病態制御薬理医学講座 主任教授 下村健寿先生

福島医科大卒業。群馬大学にて内科臨床医として勤務後、英国オックスフォード大学で数多くの研究業績を発表。KATPチャネル遺伝子異常に伴う新生児糖尿病/DEND症候群の治療法の発見に寄与。現在、母校の福島県立医科大学、病態制御薬理医学講座(旧・薬理学講座)の主任教授として糖尿病、肥満生活習慣病研究、新生児糖尿病の研究に従事する傍ら、臨床医としても糖尿病・肥満治療にあたる。