発酵食品にはどんなものがある? 発酵調味料「お酢」の原点やおすすめお酢レシピ3品もご紹介!

発酵食品とは、乳酸菌や麹菌などの微生物の作用によって発酵された食品のこと。納豆、チーズ、ヨーグルトなどの食品、しょうゆやみそなどの調味料、酒類や茶類などの飲料などがありますが、実はお酢も発酵食品のひとつなのをご存知でしょうか。今回は発酵デザイナーの小倉ヒラクさんに日本の発酵食品や酢との関係も深い日本各地の“すし”の歴史と、お酢を使った絶品レシピ3品を教えていただきました。

発酵食品の種類〜お酢も発酵食品〜

発酵食品は、微生物の作用によって発酵されたもの。納豆やチーズなどの食品、日本酒やビール、ワインといった酒類、プーアル茶や烏龍茶、紅茶などの茶類、しょうゆ、みそ、みりんなどの醸造調味料があります。昔から日本に存在していたもの、海外から輸入されるようになって定着したもののどちらもありますが、いずれも日本人にとって身近なものばかりです。お酢も発酵食品、というのは意外と知られていないかもしれませんが、実はその歴史は古く、日本では奈良時代にはすでに使われていたといわれています。

<発酵食品一覧表>

▼食品

▼飲料・酒類

▼調味料

身近な発酵食品をつくる微生物のお話

発酵を促す微生物には「乳酸菌」「酢酸菌」「納豆菌」「酵母」「麹菌(カビ)」などがあります。

ヨーグルト、チーズ・・・乳酸菌
乳酸菌が牛乳などの原料に含まれる糖類を分解して、乳酸を生成することでつくられます(乳酸発酵)。他にはぬか漬けやキムチなどの漬物なども乳酸菌が作用しています。

酢・・・酢酸菌
お酒(アルコール)に酢酸菌を加えるとお酢の主成分である酢酸ができます(酢酸発酵)。穀物酢(米酢)などの食酢はできた酢酸を1ヵ月ほど寝かせて熟成させ、濾過・殺菌の工程を経て、つくられています。※表面発酵製法の場合

どのお酒を使って酢酸発酵させるかによってお酢の種類は変わります。米からできたお酒を酢酸発酵させると「米酢」が、玄米や糠の残る米からは「黒酢」が、りんごからは「りんご酢」が、ぶどう果汁からは「ぶどう酢(ワインビネガー)」ができます。

お酢の製造工程について詳しく知りたい方はこちらをチェック!

パン、ビール・・・酵母
原料に含まれる糖を酵母がアルコールと炭酸ガスに分解することでお酒がつくられます(アルコール発酵)。原料と酵母の種類の違いによってできるお酒の種類が変わります。例えば、ビールは大麦(麦芽)✕「ビール酵母」、ワインはブドウ果汁✕「ワイン酵母」、日本酒は米✕「清酒酵母」に組み合わせによってつくられます。その他パンを膨らませる過程でも酵母による発酵が利用されます。

しょうゆ、みそ、みりん、清酒・・・麹菌(カビ)
しょうゆは原料の大豆のたんぱく質を麹カビ(麹菌)で分解した後に、酵母や乳酸菌で発酵させものです。みそは大豆や米、麦を蒸煮したものに、大豆、米、麦などを蒸煮してこうじ菌を培養したものを加えて発酵させ、熟成させたものです。

納豆・・・納豆菌
煮る・蒸すなどして柔らかくした大豆を納豆菌によって適温で発酵させたもの。納豆菌は熱に強いのが特徴で、多くの細菌は100℃で死滅しますが、納豆菌は死滅しません。

お酢の起源と歴史について

発酵大国ともいわれる日本。それもそのはず、日本料理の歴史において、しょうゆ、みそ、みりん、酢、清酒などの醸造調味料の役割は今も昔も大きいです。

中でも酢は、料理に酸味や香味、そして旨みを与えてくれますが、近年ではその減塩効果に関する研究が進んでいます。

そんな日本での酢の発祥をさかのぼると、4~5世紀ごろに酒造りと共に中国大陸から伝わった説が有力です。
奈良時代には「万葉集」に酢を詠んだ歌が初出します。

醤酢(ひしおす)に
蒜搗(ひるつ)き合てて
鯛願ふ
われにな見えそ
水葱(なぎ)の羹(あつもの)
(長忌寸意吉麿 巻十六三八二九番歌)

鯛の上にノビルをのせて醤と酢をかけて食べたいと願っているのに、なんで目の前にあるのは野草の椀汁かな。こんなの見たくもない。
…という宴席において即興で歌をつくる名人だった歌人、長忌寸意吉麿(ながのいみきおきまろ)の心の叫びが赤裸々に綴られています(※1)。

よほど水葱が嫌いだったのでしょうか。なんだか親近感がわきますよね。この後、平安期の「延喜式」には米と米麹を使った酢の造り方の記載がされています。そして酢が本格的に一般に広まったのは江戸時代に入ってから。生産量が増えるとともに料理の種類も増え、多くの料理本が出版されるようになりました(※2)。

おすしの歴史と全国各地に伝わるおすし

お酢を使った料理の代表ともいえるお寿司。実は発祥は日本ではなく、東南アジア!

「おすしはもともと東南アジアの山岳地帯で、少数民族がたんぱく質を保存するためにできたとされています。最初は魚に限らず、肉もおすしにしていたそうです。その名残として、ミャンマーには鯉の熟鮓(なれずし)、タイには豚のミンチのおすしがあります」と語るのは、発酵デザイナーの小倉ヒラクさん。「肉や魚と米を合わせて発酵させたものがおすしの根源的な定義で、3,000年弱くらいの歴史があります」

それが平安初期頃、日本に渡り、滋賀の琵琶湖近くで最初につくられたとされています。おすしといっても握り寿司ではなく、「熟鮓(なれずし)」という魚介と飯を合わせて、長い時間かけて乳酸発酵させたもの。当時は朝廷への貢物として献上され、一般庶民が日常的に口にするような食品ではなかったようです。

熟鮓(なれずし)の米は漬け床の触媒として使われていて、発酵するとお米自体が臭くなるので食べません。保存期間はだいたい1年くらい。
やがて、麹を使い甘さが加わったいずしができ、お酢にそのまま魚を漬け込んだ酢漬け、魚だけでなく米にお酢を混ぜて魚とお米(しゃり)を一緒に味わう今の握り寿司へと変化していきました。
保存期間も熟鮓(なれずし)の1年から、いずしの1ヶ月、酢漬けの2週間、そして握り寿司の1日と変化しています。
おすしは冷蔵庫が普及し、流通技術の発達とともに「保存性」から「おいしさ」へと移り変わり、現在のにぎり寿司に形を変えて人々に定着してきたことがわかります。

▼岐阜県
子持ち鮎熟れ寿し
子持ちの鮎を発酵させたなれずし。なれずしは、子持ちのメスが一番位が高いです。身が柔らかく、旨みも強い子持ちメスと比べると、オスは身が固くてにおいも気になるのだとか。地元の人は朝に一切れだけ用意して、お茶漬けにして食べます。元々は徳川家康に献上されていた貴重な食べ物です。

▼富山県
にしん糀漬け
身欠きにしんをコシヒカリの糀と米ぬかで漬けたハイブリッドなおすし。主に北陸でつくられているヘシコの技術がベースとして使われており、お米本体ではなく、精米したぬかに魚を漬け込みます。米ぬかが脂分を吸うのか、味わいは割とさっぱりとしています。

▼福井県
小鯛ささ漬
福井県の若挟小浜で生産されている小鯛を昆布と酢に漬けて笹で包んだ発酵食。魚に塩をあてて旨みを引き出し、米酢で〆たものを杉の樽に詰めます。もともと福井から京都への献上品として珍重されていました。京都へのお土産品として愛されてきました。

▼滋賀県
鮒寿し
日本のすしの起源でもある琵琶湖産ニゴロブナの子持ちメスを使用したおすしです。 春先に塩漬けし、夏に水洗いして塩を切り干したのち、桶に炊いた飯を敷き、その上にフナを重ならないように並べ、重石をのせて発酵させます。古代から朝廷に献上されていたことから、神饌や贈り物として珍重されてきた高級品です。今でもギフトとして滋賀県民に愛されています。

発酵デザイナー・小倉ヒラクさんおすすめの絶品お酢レシピ3品

お酢の酸味やうまみを最大限に生かしたおすすめレシピをヒラクさんに教えていただきました。休日のランチタイムにぜひお試しください。

<ヒラクさんおすすめレシピのポイント>
・静置発酵のお酢を使う
・お酢のおいしさを生かすために塩は極力減らす


骨付き肉を一晩お酢に漬けるだけ!ホロホロジューシー&高級店の味に
甘酸っぱいポークビンダルー

材料(2〜3人分)

豚スペアリブ…250~300g

マリネ液】
米酢…大さじ4杯
みりん…大さじ5~6杯
赤ワイン…大さじ2~3杯
プレーンヨーグルト…大さじ3杯(50g程度)
ガラムマサラ…小さじ34
ターメリック…小さじ1杯
塩…小さじ1/2杯
※ガラムマサラにこしょうが入っていない場合は、こしょう少々を入れる

玉ねぎ…1個
にんにく…2片
トマトの水煮…1/2 缶
水…100ml程度
油(ひまわり油、グレープシードオイルなど)…大さじ4杯
クミンシード(ホール)…小さじ1/2杯

作り方

1.ボウルにマリネ液の材料を合わせてよく混ぜ、スペアリブを入れて5~8時間(できれば一晩)おく。

2.厚手の鍋に油大さじ2杯程度を熱し、クミンシードと玉ねぎを入れて強めの火で炒める。玉ねぎが薄く色づいてきたらにんにくを加え、残りの油も加えながらさらに炒める。

3.玉ねぎが茶色っぽくなってきたら、マリネしておいた肉をマリネ液ごと入れ、ホールトマトも加えて強火にかける。

4.沸騰したら弱火にして水を加え、軽く混ぜてからフタをして25~30分煮る。

5.器にごはんを盛り、4のカレーをかける。

レシピ提供:小倉ヒラク

 

マヨネーズも塩も不要!お酢とみりんでさわやかなうま味★
しば漬けポテトサラダ

材料(3人分)

じゃがいも…3個
しば漬け(粗みじん切り)…30g
大さじ2
みりん大さじ3

作り方

1.じゃがいもを4等分に切る。耐熱ボウルに入れて、ラップをし、電子レンジ(600w)で5分加熱する。(火が通っていなければ追加加熱する。)

2.マッシャーで軽くつぶし、しば漬け、酢、みりんを入れて混ぜ合わせる。
※みりんのアルコールが気になる場合は、電子レンジで1〜1分半くらい加熱し、アルコールを飛ばす。

レシピ開発:おいしい健康 管理栄養士

後味スッキリ!クラフトコーラをご家庭で 
お酢を使ったクラフトコーラ

材料(12人分)

純酒粕酢…250ml
砂糖…275g
水…100ml
バニラビーンズホウル…1/6本
クローブ(ホウル)…2.5g
カルダモン(ホウル)…2.5g
カルダモン(パウダー)…小さじ1 /2
シナモンスティック …1本
シナモン小さじ…1/2

作り方

1.鍋(直径18cm程度)に材料をすべて入れ、中火でときどきかき混ぜながら煮る。出来上がり500mlになるまで7分ほど煮詰める。
(上記の鍋で煮た場合、高さが0.5cmほど減るのが目安)

2.粗熱が取れたら、スパイスを残したまま、冷蔵庫に保管し、ひと晩おく。

3.こしてシロップの完成。

※お召し上がりの際は、グラスに氷とレモンスライス1/2枚を皮ごと搾り入れて、シロップ40ml、炭酸水150mlを注ぎ、混ぜ合わせ、お好みでミントを添えてお召し上がりください。
※カルダモン(ホウル)2.5gは10粒程度です。
※クローブ(ホウル)2.4gは24粒程度です。
※冷蔵庫に保管し、できあがりから5~6日を目安にお召し上がりください。
※ステンレスまたは樹脂加工した鍋を使用してください。

レシピ提供:株式会社Mizkan

※1 はじめての万葉集 県民だより奈良 平成28年6月号 
https://www.pref.nara.jp/43798.htm

※2 柳原尚之ほか(2021年)江戸期における日本料理への酢の使われ方 日本調理学会誌 54 ,3 , p.132-140
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/54/3/54_132/_pdf/-char/ja

 

監修:発酵デザイナー 小倉ヒラクさん

「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国各地の醸造家たちと商品開発や絵本・アニメの制作やワークショップを行っている。発酵文化を旅して食べて楽しむ観光連動型展覧会「発酵ツーリズム」主宰。下北沢「発酵マーケット」オーナー。国内外含めて生産者にじかに会い、作っている現場を見た商品しか常備しないこだわりよう。現在、国内外から取り揃えた約500種類の品々が店頭に並ぶ。YBSラジオ『発酵兄妹のCOZY TALK』パーソナリティ。著書に『手前みそのうた』『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』など。

 

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