お酢博士赤野さん×料理家河井美歩さん スペシャル対談 「世界のお酢 イタリア編」

さまざまな国や地域で親しまれているお酢の魅力を紹介する連載コーナー「世界のお酢」。2カ国目は「イタリア」。今回は、お酢博士の赤野裕文さんが、イタリア料理に詳しい料理家の河井美歩さんにイタリアの食文化やお酢事情、お酢を使ったイタリア料理などのお話を伺いました。

イタリア料理はシンプルな調理方法が基本

赤野さん

イタリア料理に興味を持ったきっかけは何ですか?

河井さん

夫が幼少の頃イタリアで過ごしていたこともあり、結婚後は必然とイタリアの食や文化に触れる機会が増えました。イタリアに住む夫の知人とも馴染みが深くなり、結婚後には1ヶ月間料理修行にも。イタリアのさまざまなエリアの食に触れてきました。今でも機会があれば伺う国の一つです。
 
イタリアは地域によって気候や文化が異なり、北イタリアはバターや生クリームを使うのでフランス料理に近く、南イタリアはトマトやオリーブオイルをよく使うシンプルな料理が多いですね。

赤野さん

1ヶ月間料理修行をされたんですね!イタリアの食習慣で印象に残っていることはありますか?

河井さん

イタリアの食習慣の特徴はたくさんありますが、その中でも印象的なのが「バール」と呼ばれるカフェに毎朝ふらりと立ち寄り、立ち飲みでエスプレッソをサクッと楽しむのがルーティンですね。「mio bar」=私のバールという言葉がある程、日々の生活に欠かせないもので、馴染みのバリスタが淹れるいつものカフェが大切なのだとか。
 
それから、イタリアでは家でも前菜のアンティパスト→パスタやリゾットなどプリモピアット→メインディッシュのセコンドピアットの順に食べるのが伝統的な食事スタイル。日本料理は先にメインディッシュを食べてから締めの炭水化物になるので、食べる順序が異なります。

イタリアでお酢を使った代表的な料理は「タリアータ」と「カポナティーナ」

赤野さん

イタリアでお酢を使った代表的な料理はどんなものがありますか?

河井さん

タリアータとカポナティーナが代表的なお酢を使ったイタリア料理ですね。タリアータはバルサミコ酢、カポナティーナは白ワインビネガーを使います。イタリアではバルサミコ酢や白ワインビネガーを使うことが多いのですが、酸が強くツンとするのでカポナティーナのように砂糖を加えた甘酢煮や、バルサミコ酢を使ったドルチェなどは子どももデザート感覚で食べたりしていますね。

イタリアでは、お酢は意外なアイテムとしても活躍

赤野さん

イタリアでは健康のためにお酢を摂る習慣はありますか?

河井さん

イタリアのレストランでは、テーブルにバルサミコ酢やワインビネガーなどの調味料が置いてあって、自分で味を整えながら食事を摂ることが多いです。お酢はそれほど身近な存在にも関わらず実は、健康のためにお酢を摂るという習慣はないようです。また、お掃除や洗濯をする際に使うものという認識も強いのだとか。レストランでは、シルバーウェアを拭く際にお酢を少しふりかけたり、食洗機で洗剤と一緒に使っていたりするそうですよ。

私にとってお酢は健康に欠かせない調味料

赤野さん

河井さんにとってお酢はどのような存在で、どのように使うことが多いですか?

河井さん

私にとってお酢は健康に欠かせないもの。今はドリンクとして流行っていますが、私は調味料として意識して取り入れることが多いですね。米酢・黒酢・白ワインビネガーは欠かしたことがありません。サラダはシンプルにビネガー・オリーブオイル・塩をかけていただいたり、黒酢を納豆に入れたり。料理にもよりますが、塩気が足りないと思ったときには、先ずお酢を足して塩気を引き出すようにしていますね。特に中華料理などの脂っぽいものを食べる際にはたくさんかけていただきます。

赤野さん

なるほど。調味料として取り入れることが多いとのことですが、他にお酢の使い方はありますか?

河井さん

カリフラワーや蓮根などを白く茹でたいときの料理のアクとりとしてや、ごぼうのアク抜きなどに使いますね。また、お酢には殺菌作用があるので、夏場のお弁当に酢を少し入れて炊いて梅干しを添えたりしています。昆布締めするときはお酢でサッと拭いてから使ったりも。
 
それから、イタリアと同じくシンクの掃除などにも使います。お酢で磨くとピカピカになります。お酢は健康によいだけでなく、いろいろな使い方ができるところも素晴らしいですね。

【河井さんご自身が現地で撮影されたイタリアの料理や風景】

ほうれん草のラヴィオリ
ひよこ豆のガレット

ラヴィオリ

撮影/梁瀬岳志
文/金井さとこ

監修:料理家 河井美歩さん

徳島県出身。大手料理教室にて10年間、講師・人材育成・商品企画・開発等を経験した後、2009年よりフリーの料理家に。つくばと東京・神楽坂を拠点に ニューヨーク、熊本、名古屋など国内外で料理イベントを開催中。料理教室・メニュー開発、商品企画、レシピ作成 ・店舗プロデュース・フードスタイリング ・企業タイアップなど幅広く活躍。

監修:お酢博士 赤野裕文さん

山口県出身。広島大学工学部醗酵工学科卒業。1979年、㈱中埜酢店(=ミツカングループの以前の社名)に入社し、食酢の基礎研究やマーケティング、商品開発など食酢に関わるさまざまな分野を担当。2016年に㈱Mizkanを定年退職し、現在は食酢エキスパート社員として食酢の啓蒙活動を行っている。