

世界のうまずっぱい料理|アメリカ編
新しいおいしさに出会う「世界のうまずっぱい料理」アメリカ編のご紹介です。ジャマイカ、エルサルバドル共和国、アルゼンチン共和国、ペルー共和国、そしてエクアドル共和国。お酢を使った「アメリカの郷土料理」をおたのしみください。
ジャマイカ|ジャークチキン



ジャマイカは、西アフリカから奴隷として連れて来られた人々を主体にした、カリブ海に浮かぶ英連邦の国。その食文化には、カリブの土着文化に加え、アフリカやイギリスの影響が見られます。
ジャーク・チキンは、ジャマイカ生まれのスパイシーなソース「ジャーク」を使った鶏肉のグリル。豚肉や牛肉、魚、エビ、野菜などにも用いられます。
前夜から肉を酢入りのジャークソースにマリネしておけば、あとは焼くだけ。酢の効果で肉が柔らかくなり、またソースの複雑な味の深みを引き立てます。
室内で上品にいただくよりも、野外でワイルドに食べた方がいっそうおいしく感じる、アウトドアにぴったりの料理です。現地では、ドラム缶を水平に切り、上に網を張って炭火焼きするスタイルがポピュラー。
ジャークソースは市販品もありますが、たまねぎなどの野菜を使って自分で作れば、フレッシュな味わいがひとしおです。


- [マリネ液]
- たまねぎ……小1/2個
- にんにく……1片
- しょうが……1かけ
- タイム(生葉または乾燥)……少々
- きび砂糖……小さじ1
- りんご酢……大さじ1
- しょうゆ……大さじ2
- とうがらし粉……少々
- 黒こしょう……小さじ1/2
- オールスパイス……小さじ1/2
- 植物油……大さじ1
- 鶏肉……500g(骨付きもも肉など、かたまりのもの2本以上)



[マリネ液]の材料をフードプロセッサーに入れてペースト状にする。


[1]をフリーザーバッグに入れ、鶏肉をもみ込んでマリネする。冷蔵庫で一晩置く。


グリルパンまたはコンロの魚焼き器などで、[2]を肉に火が通るまでこんがりとよく焼いてできあがり。
エルサルバドル共和国|クルティード



エルサルバドルは、古くから農耕で栄えた高度なメソアメリカ文明のあった中米の国。16世紀に始まったスペイン植民地時代にヨーロッパの影響を受け、両者の特徴が混ざった食文化を培ってきました。
クルティードは、そんなエルサルバドル・スタイルのザワークラウト。千切りしたキャベツに赤たまねぎやにんじん、乾燥オレガノを加え、酢で漬けて作ります。
フレッシュな浅漬けでも食べられますし、密閉したガラス瓶に入れて冷蔵庫で保存し、軽く発酵させてもおいしいです。日に日に味が変わっていき、3日もすると酸味がよりまろやかになります。
酢に漬けることで野菜の保存に役立ち、そのさっぱりした味わいは、肉や魚のグリルなどの付け合わせとしても活躍します。


- キャベツ……小1/2個
- にんじん……1本
- 赤たまねぎ……1/4個
- りんご酢……50ml
- 乾燥オレガノ……ひとつまみ
- 塩……ひとつまみ



キャベツ、にんじん、赤たまねぎを千切りする。


キャベツをラップに包み、電子レンジ(600w)に2~3分ほどかけて柔らかくする。


大きなボウルに[2]のキャベツ、[1]の千切りしたにんじん、赤たまねぎを入れて混ぜる。


[3]にりんご酢、乾燥オレガノ、塩を入れて混ぜる。30分ほど置いて味をなじませてできあがり。
アルゼンチン共和国|チミチュリ



1816年にスペインから独立したアルゼンチンは、スペイン、イタリアなどからの移民が多く暮らす国。肥沃な大草原パンパに牛が放牧され、世界有数の牛肉の消費国でもあります。
そのパンパに生きるガウチョ(牧童)たちを起源とする伝統的な肉のグリルを「アサード」といいますが、チミチュリは焼いた牛肉によく合う酸味のきいたグリーンのソースです。
チミチュリの語源は、アルゼンチンに移住したスペインのバスク人の言葉「順不同の混合物」から。主な材料はパセリとにんにく、乾燥オレガノにとうがらし。これにオリーブオイルや酢などの調味料を加えて混ぜるだけです。また、作り置きや冷凍保存もできます。酢には肉を柔らかくする効果がありますが、特に赤ワインビネガーと牛肉の相性は抜群。
牛肉のほか、鶏肉や魚、焼いたポテトやブロッコリーなどの野菜にかけてもおいしい、まさに万能ソースです。


- パセリ……1/2カップ
- にんにく……2かけ
- とうがらし(鷹の爪)……1/2本
- 乾燥オレガノ……大さじ1/2
- パプリカ粉……小さじ1/4
- 赤ワインビネガー……大さじ2
- オリーブオイル(エクストラバージン)……1/4カップ
- 塩……適量
- 黒こしょう……小さじ1/4



パセリ、にんにく、とうがらし、乾燥オレガノ、パプリカ粉、赤ワインビネガー、オリーブオイル、塩、黒こしょうをフードプロセッサーまたはミキサーに入れてペースト状にする。
※フードプロセッサーやミキサーがないときは、パセリ、にんにく、とうがらしをみじん切りして、その他の材料と一緒にボウルの中で混ぜる。

[1]を2時間以上冷蔵庫に入れて味を落ち着かせてできあがり。
ペルー共和国|ロモ・サルタード



じゃがいもやトマト、とうがらしの原産地であり、アンデスの山岳地帯はインカ帝国の中心地だったペルー。16世紀にスペイン人に滅ぼされた後もその名残りが受け継がれ、またヨーロッパやアジアなどからの移民が形成した食文化を育んでいます。
牛肉をしょうゆや酢、赤ワインなどの調味料でヨーロッパ風にマリネしたあと、トマトや揚げたじゃがいも、たまねぎなどとともに中国式に炒めて作るロモ・サルタードは、さまざまな食文化がミックスしたペルーならではの料理です。
ペルーでもっとも愛されている料理のひとつともいわれ、通常はワンプレートでごはんと一緒に食べるため、日本人の口にもよく合います。
ロモ・サルタードのロモは牛肉のロースやサーロイン、サルタードは炒めるの意味。赤身肉の柔らかい部位を使うのがおすすめです。酢を加えてマリネすることで肉がより柔らかくなり、さっぱりした味わいが楽しめます。


- 冷凍フライドポテト(太めのもの)……200g
- 酢……大さじ1
- しょうゆ……大さじ1と1/2
- 赤ワイン……大さじ1と1/2
- 塩……少々
- こしょう……少々
- クミン粉……少々
- 牛ロース肉……200g(1cm幅くらいに細切り)
- 赤たまねぎ……1/2個(1cm幅くらいに薄切り)
- にんにく……1かけ(みじん切り)
- とうがらし(鷹の爪)……1本(輪切り)
- トマト……1個(1cm幅くらいに櫛切り)
- 赤ピーマン……1個、または赤パプリカ1/2個(1cm幅くらいに薄切り)
- コリアンダーの葉(パセリでもよい)……少々(みじん切り)
- 植物油……適量
- ごはん……適量



鍋に植物油を多めに入れ、フライドポテトを作る。キッチンタオルで油を切っておく。


ボウルに酢、しょうゆ、赤ワイン、塩、こしょう、クミン粉、植物油大さじ1を入れて混ぜ、細切りした牛肉を入れて下味をつける(液は取っておく)。


フライパンに油を入れ、強火で焼き色がつくまで[2]の牛肉を焼く。


[3]に油を少し追加して赤たまねぎをしんなりするまで炒め、にんにく、とうがらしを加えて火を通す。


[4]にトマト、赤ピーマンを加えて火を通す。


[5]に[2]のマリネ液を加え、混ぜ合わせる。味を見て必要なら塩を加える。


[6]にコリアンダーの葉と[1]のフライドポテトを加えてさっくりと混ぜ、火を通してできあがり。お皿に盛ってごはんを添える。
エクアドル共和国|エスカベッシュ・エクアトリアーノ



野生動物の楽園ガラパゴス諸島やバナナの一大産地として知られる、赤道直下にある南米の国エクアドル。1822年にスペインから独立し、食文化にもスペインの影響がうかがえます。
エスカベッシュは、揚げた魚を酢などでマリネしたスペインやポルトガルの料理で、日本には「南蛮漬け」として調理法が伝来しました。フィリピンや中南米など両国の植民地だった地域にも同様に広く伝わって、それぞれ独自に発展。エクアドルにも独特なエスカベッシュがあります。
室温か冷蔵庫に入れて冷やして食べることの多い一品ですが、エクアドルではトマトピュレを少量加えた酢のソースで揚げた魚を軽く煮込んで、熱いまま食べます。酸味がきいたソースと揚げ物との相性はぴったり。脂っこさも緩和されます。
魚の種類は白身魚でも青魚でも構いません。トッピングにはスライスしたゆでたまごを。


- 白身魚……200g(食べやすい大きさにカット)
- 塩……少々
- こしょう……少々
- 小麦粉……適量
- 植物油……適量
- 酢……1/2カップ
- 月桂樹の葉……1枚
- トマトピュレ……小さじ1
- 赤たまねぎ……1/4個(薄切り)
- レタス……1~2枚
- ゆでたまご……1個(輪切り)



白身魚に塩、こしょうを振って味をつけ、小麦粉をまぶし、余分な小麦粉をはたく。


[1]を植物油できつね色になるまで揚げる。油を切って置いておく。


フライパンに酢を入れて熱し、[2]で使った油少々、月桂樹の葉、トマトピュレを加える。


[3]に赤たまねぎを入れて炒める。


[4]に[2]の揚げた魚を加えて浸し、ふたをして5分ほど中火で煮込む。

お皿にレタスを乗せ、[5]を盛りつける。輪切りにしたゆでたまごを飾ってできあがり。

監修:お酢博士 赤野裕文さん
山口県出身。広島大学工学部醗酵工学科卒業。1979年、㈱中埜酢店(=ミツカングループの以前の社名)に入社し、食酢の基礎研究やマーケティング、商品開発など食酢に関わるさまざまな分野を担当。2016年に㈱Mizkanを定年退職し、現在は食酢エキスパート社員として食酢の啓蒙活動を行っている。

監修:各国・郷土料理研究家 青木ゆり子さん
e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、世界の料理レシピ・ライブラリー&サロン運営。
2000年に世界の料理総合情報サイトe-food.jpを創設。エッセイスト、レシピ開発、食文化講師、シェフ等として活動。世界各地で取材した郷土料理の魅力を広め、食を通じた国際理解の啓蒙を目指す。2020年内閣官房ホストタウン事業 郷土料理講師拝命。主な著書「世界の郷土料理辞典」(誠文堂新光社)2020年
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