お酢の味わいと風味はさまざま
ひと口に「お酢」といっても、その味わいはさまざま。単に酸っぱいだけではないのです!酸味が「やわらか」だったり「キリッと」していたり。また、「深み」があったり「すっきりと」していたり。風味は主原料や熟成期間によっても異なります。まずは主なお酢の味を見てみましょう。
お酢の味わい・風味MAP
穀物酢や米酢は和食に欠かせないお酢です。そして、りんご酢やワインビネガーが最もすっきりとしてきりっとした酸味、バルサミコ酢が深みがあってやわらかい味を持っています。どれも欧米でメジャーなお酢ですが、国内でもよく使われています。調理の際は、いつも使っているお酢を基準として、もう少しすっきりとした味にしたい、深い味わいにしたいなど、自分好みの味に合わせてお酢を選ぶのもおすすめ。お酢の味の違いがわかると、料理に活用しやすくなります。また、自分好みのお酢を探す参考にもなりますね。それではこの後は、お酢の種類別にじっくり解説していきます。
家庭用のお酢は、ほとんどが「醸造酢」!
まずはお酢のラベルを見てましょう。そこに「醸造酢」「穀物酢」などの表示がありませんか?実は、この商品ラベルの表示は、消費者庁「食品表示基準」により定められています。お酢の正式名称は「食酢」。お酢は大きく「醸造酢」と「合成酢」に分けられますが、家庭で使われるお酢は醸造酢が主流です。ちなみに醸造酢とは、穀類、果実、野菜、はちみつ、アルコール、砂糖などを原料に、酢酸発酵させた液体調味料のこと。そして、氷酢酸または酢酸を使用していないものを指します。「酢酸発酵」というと難しそうですが、酢酸菌のチカラで発酵させた調味料なんです。いわば発酵食品。
<1>「穀物酢」は“これさえあれば”の万能選手
次に「醸造酢」を大きく2つに分けると、何と何に分けられると思いますか?そう。「穀物酢」と「果実酢」です。穀物酢は、原材料として1種または2種以上の穀類を使用し、その使用総量が醸造酢1リットルにつき40g以上のものと定義されています。要は、穀類を主原料としているお酢のことですね。穀物酢は、きりっとした酸味とすっきりとした口当たりで、クセがないのが特徴。幅広い料理に大活躍してくれるお酢です。まず、1本お酢を選ぶならば、穀物酢がいいでしょう。
<2>「米酢」は香りが良く味のバランスがいい
ほかにも穀物酢に分類されるのが、米を主原料とした「米酢」。米酢は、米の使用量が穀物酢1リットル中に40g以上のもので、米黒酢を除いたものと定義されています。米のおいしさを生かした、まろやかな風味が特徴です。和洋中のいろいろな料理によく合いますが、特におすしなどの和食におすすめ。また、穀物酢に比べて、香りが豊かなことでも知られています。
<純米酢と米酢の違いは?>
原料を1種類のみで製造した商品に表示する際に「純」と表示が入ります。ちなみに、お米のみから作った米酢は「純米酢」と表示ができますが、米とアルコール、米と小麦のように米以外の原料を使用した場合には「純」の表示は不可で「米酢」となります。同じように、りんご果汁のみから作ったりんご酢は「純りんご酢」と表示を入れられます。
<3>「黒酢」は発酵や熟成でうまみがスゴい
同じく米が主原料。発酵や熟成によって黒褐色に着色されたお酢が「黒酢」です。黒酢には米黒酢と大麦黒酢がありますが、市販品の主流は米黒酢(黒酢と略す)です。黒酢は、原材料に玄米のようにぬか層のついた米、またはこれに小麦もしくは大麦を加えたもののみを使用し、米の使用量が、穀物酢1リットルにつき180g以上のもので、発酵及び熟成により褐色または黒褐色に着色したものと定義されています。つまり玄米(のようなぬか層のついた米)をたっぷりと使い、うまみがリッチで黒っぽい色合いのお酢です。そして、黒酢独特の色合いは、原料由来の甘みとうまみ成分が反応したもので(メイラード反応)、独特な風味を醸し出しています。そのため、黒酢はうまみ成分が豊富で、クセがなくやわらかな酸味が特徴。料理にコクを与え、中華料理にもぴったりです。また、健康のために水や炭酸で割って飲む方法もおすすめです。
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<4>「りんご酢」はドリンクやデザートに最適
りんご、ぶどうなど、果物を使ったお酢を見たことはありませんか?
これらは「果実酢」に分類されます。醸造酢のうち、原材料として1種または2種以上の果実を使用したもの。その使用総量が醸造酢1リットルにつき果実の搾汁として300g以上のものを指します。ひとことでいえば、果物を主原料としたお酢です。代表的な果実酢に「りんご酢」があります。
ちなみに、果実酢のうち、りんごの搾汁が果実酢1リットルにつき300g以上のものが「りんご酢」、ぶどうの搾汁が果実酢1リットルにつき300g以上のものが「ぶどう酢」と定義されています。水や炭酸、フルーツジュースと割って飲んだり、デザートの材料として使ったりと、穀物酢とはひと味違った楽しみ方がができます。りんご酢の仲間には、海外のアップルビネガーや、シードル(りんご酒)から作るシードルビネガーがあります。
<5>コクの「バルサミコ酢」、キレの「ワインビネガー」
ぶどう酢の仲間「バルサミコ酢」「ワインビネガー」も忘れてはいけません。バルサミコ酢はブドウを原料にした⽢酸っぱい調味料。イタリアのエミリア・ロマーニャ州のモデナまたはレッジョ・エミリアで作られたイタリア原産の伝統的なお酢です。サラダにかけたり、デザートに用いられたり、イタリア料理には欠かせません。そして、主に熟成期間によって味にも価格にも違いがあります。⻑い年⽉をかけて熟成させたトラディツィオナーレは、とろりとして芳醇な香りと濃厚な味が特徴で、デザートにそのままかけたりします。一方熟成期間が短いものは、さらりとして酸味があり、ドレッシングなどに向きます。バルサミコ酢を購入する際には、D.O.P又はI.G.P(※)という2種類のシールが貼られた商品を選ぶとよいでしょう。
一方、ワインビネガーは、ぶどうからつくられるワインを主原料としたお酢。白ワインからつくられるものを白ワインビネガー、赤ワインからつくられるものを赤ワインビネガーと呼びます。香り高いフルーティーな香りと、キレのある酸味が特徴。フランス、イタリアなど欧州でよく使われていて、ドレッシングの材料としてはもちろん料理の隠し味に使われています。国内で製造されたワインビネガーは酸度5%が一般的ですが、輸入ワインビネガーの酸度は6%が一般的です。
<D.O.Pや I.G.P とは?>
D.O.Pシールの貼られた商品は、主原料がぶどうの濃縮果汁のみとなります。長期にわたる樽熟成により、糖とアミノ酸が反応して芳⾹成分が⽣じ、⾊も濃くなります。また、⽔分が抜けて濃縮されるので、芳醇な香りと濃厚な味が特徴です。D.O.PはEU法に準拠したイタリア国内の原産地名称保護制度で認証されたことを示すものです。また、伝統的バルサミコ酢の製法・品質の保証があり値段も高価。そして、商品にはアチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレと表示されています。
▶︎アチェートは酢、バルサミコは芳香のある、トラディツィオナーレは伝統的という意味。
▶︎I.G.Pは保護地理的表示制度で認証されたことを示す。
▶︎I.G.Pシールの貼られた商品は、主原料はモストとワインビネガー。熟成期間は短め。
伝統的バルサミコ酢に比べると製法は自由度が高いので、さらっとしたテクスチャーのものから、かなり濃度のあるもの、酸味のしっかりしたもの、甘みが前面に出ているものなど、様々な品質から好みで選ぶことができます。I.G.PはD.O.P.より緩い規定ではありますが、品質は保証されていて安心して使うことができます。
<6>近年、再評価。食通がうなる「粕酢」
ワインからつくられる「ワインビネガー」があるならば、日本酒からは「米酢」と思われるかもしれませんが、日本酒の製造工程で出る酒粕を利用し、酢酸発酵させたのが粕酢です。飴色の深い色合いが特徴で、「赤酢」とも呼ばれることも。起源は江戸時代後期。江戸でブームになっていた「すし」に目をつけたのが現在の愛知県半田市の酒造家でした。すしにはお酢が欠かせませんが、当時の米酢は高価。粕酢は米酢に比べ手ごろなうえ、うまみもあまみもリッチで、すしによくあう品質だったため大ヒット。江戸前ずしに欠かせないお酢となりました。一時は時代の影に隠れていましたが、近年そのおいしさが再評価。有名寿司店などで使われ、食通の間では知られているお酢です。すしだけではなく、肉料理にもよくあいます。ちなみに、「粕酢」はスーパーマーケットなどで目にすることはあまりありませんが、インターネットで購入することができます。熟成を重ねれば重ねるほど色が濃くなりますので、選ぶときは色もポイントにするといいですね。
<7>1000年以上前から日本人に愛され続ける「調味酢」
そして、意外と歴史が古いのが「調味酢」。時代は奈良時代にさかのぼります。すでにこのころには、発酵調味料である醤(みそやしょうゆなどの原形)にお酢を混ぜた、今でいう「二杯酢」のような調味酢が使われていました。調味酢は、お酢にしょうゆ、砂糖、香辛料などを加え、味を調製したものを指します。「合わせ酢」とも呼ばれており、代表的な調味酢に「すし酢」「二杯酢」「三杯酢」「甘酢」などがあります。
「合わせ酢」は、お酢に合わせる調味料によって異なります。調理する料理によってベストな組み合わせ、割合があるんです。代表的な調味酢であるすし酢・二杯酢・三杯酢・甘酢については次回以降の「お酢のキホン」で詳しく紹介しますので、楽しみにしていてください。
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※今回のご紹介内容は一般的な商品での説明となり、製法によっては異なる可能性がございますのでご了承ください
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