アップルサイダービネガーのヒットのヒミツ

お酢ラーさんの中にも愛用者の多い「リンゴ酢」。米国では古くから「アップルサイダービネガー」として浸透していますが、昨今その美容・健康効果が再注目され、新たな盛り上がりを見せています。 今回は、日本にも広がりつつあるアップルサイダービネガーのヒットに隠されたヒミツを深掘り。健康医療ジャーナリストの西沢邦浩さんと共に、アップルサイダービネガーがなぜ米国、そして日本でヒットしているのかを考えます。お酢健編集部おすすめのアップルサイダービネガーの飲み方も、ぜひチェックを。

アップルサイダービネガーとは

アップルサイダービネガーとは、リンゴ果汁を発酵させて作られるお酢のこと。「サイダー」と聞くと炭酸飲料のイメージがありますが、欧米ではリンゴ果汁を発酵させて作ったアルコール飲料のことをいいます。日本ではフランス語の「CIDER(シードル)」のほうがイメージしやすいかもしれません。アップルサイダー(=リンゴ果汁をアルコール発酵したもの)を、さらに酢酸発酵させたものが「アップルサイダービネガー」なのです。

日本の「リンゴ酢」と基本的に同じものですが、アップルサイダービネガーは低温殺菌やろ過をしていないものを指すことが多いようです。そのため、酵母菌や酢酸菌などからなる「マザー」と呼ばれるにごりを含むものがほとんど。アップルサイダービネガーの瓶の底に沈殿している粉のようなものが「マザー」で、飲んでも大丈夫?と心配になる方もいらっしゃると思いますが、正体はさまざまな健康効果をもたらすといわれる酢酸菌なのです。

米国ではどんな使い方をしているのか?期待されている効果は?

アップルサイダービネガーは、米国では一般的な調味料のひとつで、ドレッシングやディップソース、マリネ液などの材料として使ったり、水で割ってドリンクにしたりと、幅広く活用されています。日本における穀物酢のように、一家に一本はあるような定番調味料なのです。ほかに、ヘアケア、スキンケアのほか、掃除や洗濯アイテムとして使っている方もいるようです。

米国では、アップルサイダービネガーに「ダイエット」や「血糖値上昇抑制」の効果を期待している方が多いようですが、実際にさまざまな研究からその効果が指摘されています。たとえば、高カロリー食のラットにアップルサイダービネガーを与えたこところ、血糖値上昇が抑制され、コレステロール値も低下することが確認されています。1)

また、過体重や肥満の若者、成人を対象とした試験では、12週間毎日アップルサイダービネガーを経口摂取することで、体重が6~8kg、BMIが2.7~3.0ポイント減少し、血糖値やコレステロール値も改善しました。2) アップルサイダービネガーは、体感だけでなくこうした研究結果も背景にして健康に欠かせないアイテムとして、米国の家庭に浸透しているのです。

米国で流行した理由とは

米国で古い歴史を持つアップルサイダービネガーは、定期的に大きな流行が起こるアイテムでもあります。1917年頃にはアップルサイダービネガーによるダイエットブームが起きており、近年では、2014年にハリウッドセレブたちの間で、ダイエットや美肌に有効な飲み物として空前のブームに。その後、一般人にも広がりを見せました。

「2018年頃からは、アップルサイダービネガーを使ったグミの人気に火が点きました。強い酸味が苦手な人でも生活に取り入れやすくなり、合わせてメーカーがアップルサイダービネガーの健康メリットを訴求したことも相まって、さらに流行が加速したのではないでしょうか」と語るのは、健康医療ジャーナリストの西沢邦浩さん。

アップルサイダービネガーの健康効果への期待が、流行の背景にあることは確かなようです。

「米国の公的な保険制度は対象者が限られるため、一般の人は医療費に悩まされるケースが多い。自己破産の原因の一つになるほどなので、病気になること自体が経済的リスクといえます。そして“肥満”は多くの疾患の引き金になると喧伝されていることもあり、ダイエットに役立ちそうなものは人気が出やすい傾向があるように思えます。

また伝統的なビネガーが持つナチュラルなイメージも人気の理由ではないでしょうか。余計なものを使わず、からだによさそうという安心感は、成人層だけでなく子どもにまで広がるきっかけにもなります。そのため、アップルサイダービネガーグミの登場で一気に子どもをユーザーに取り込むことができたのでは」

では、これまで米国で流行したダイエット食品類との違いは?

「例えば、今までにブームとなったアサイーやキヌアなどは国外から入ってきたものですが、アップルサイダービネガーは米国に古くからあるものです。ですから、伝統的な食の見直しといった一面もあるのかもしれません」

米国で流行した理由とは

コロナ禍以降、日本でも健康への意識が高まっています。それを受けて、アップルサイダービネガーは日本でも広がり始めているようです。2023年、SNSではアップルサイダービネガーの人気ブランドによるキャンペーンをきっかけに再注目され、同ブランドのアップルサイダービネガーに関するGoogle検索数も前年比+900%と大幅にアップしました。

アップルサイダービネガーのような“飲む酢”は、1996年に「はちみつ黒酢ダイエット」がヒットして以降、日本でもたびたび話題になってきました。

「黒酢や韓国から入って来たドリンク酢などが繰り返し話題を作ることで、女性を中心に“お酢を飲む”という美容健康法が定着しました。米国発の(米国タイプの)アップルサイダービネガーがブームになる可能性は十分あると思います」

コラム:お酢ラーさんの間では、すでに「リンゴ酢」が人気!

お酢健が運営するXアカウント「お酢好き集まれー!(@osu_lv)」にはお酢ラーさんからのたくさんのコメントが届いています。中でも「リンゴ酢」をサラダにかけたり、炭酸水に入れるなどの方法で、習慣的にとり入れている方のコメントが多く見られます。「リンゴ酢」をとる理由として「フルーティ」「ほのかなリンゴの香り」などの味や香りだけでなく、「健康のため」というコメントも。

お酢ラーさんの間では、健康と味わいの両面から「リンゴ酢」人気がきていることがうかがえます。この流れが日本中に広まるのも、すぐそこかもしれません。

     

毎日りんご酢をサラダにかけて食べてます!お酢大好き😆💕

     

定期的にりんご酢飲んでます!🍎健康に良いのでこれからも続けたいです!

     

毎日炭酸水にリンゴ酢混ぜて…飲んでますっ🥰♩目指せ血液サラサラ〜♡

<その他コメント>
・毎朝りんご酢🍎とバナナ🍌が私の朝食です‼️いろんな料理にもお酢をかけて食べるのが好きです❤️
・お酢大好きで、毎日りんご酢を炭酸で割って飲んでます♥️
・りんご酢や酢の和え物などその他の料理にも入れたりしてなるべく酢を摂るようにしてます😊
・りんご酢も常備しているので、冬はハチミツとお湯で割ってほっと一息ついてます✨
・寝る前にリンゴ酢をティースプーン2〜3杯飲んでます☺️✨カルピスで割るとめっちゃ美味しいです😊💕
・リンゴ酢に炭酸水で毎日健康に 蜂蜜入れてグビグビ飲めます
・マリネのドレッシングをリンゴ酢でフルーティに手作り🍎✨

おすすめ!アップルサイダービネガー炭酸割り

酵母菌と酢酸菌による二重発酵により菌の恩恵をたっぷり取り入れることができるアップルサイダービネガー。西沢さんおすすめの飲み方は、強炭酸水で割る方法とのこと。

「炭酸水に使われる“Sparkling”という英単語は、泡立つという意味の他にも、火花や花火のようにキラキラときらめく、ワクワクする、ときめくといった意味でも使われるようです。その言葉の通り、炭酸水は少々ぬるい状態で飲んでも、水を飲むよりも爽快感が得られます。そこに酢の酸味が合わさると、さらにスッキリとした味わいに。とくに、これから暑くなる時期にはぴったりです」

強炭酸水には、暑熱環境下で摂ることで脳の血流速度を高め、もやっとした気分を改善する作用があるとする研究があります。3) お酢でも血管を拡張して血流を促進させる機能が報告されており4) 、アップルサイダービネガーの強炭酸水割りには、強炭酸水と酢の相乗効果が期待できそうです。


1)Driss Ousaaid et al.Beneficial Effects of Apple Vinegar on Hyperglycemia and Hyperlipidemia in Hypercaloric-Fed Rats.J Diabetes Res. 2020; 2020:9284987.

2)Abou-Khalil, R., et al. (2024). Apple cider vinegar for weight management in Lebanese adolescents and young adults with overweight and obesity: a randomised, double-blind, placebo-controlled study. BMJ Nutrition, Prevention & Health. doi.org/10.1136/bmjnph-2023-000823.

3)Naoto Fujii et al.Ingestion of carbonated water increases middle cerebral artery blood velocity and improves mood states in resting humans exposed to ambient heat stress:Physiology & Behavior.2022;255:113942

4)Syoji Sakakibaraet al.Vinegar intake enhances flow-mediated vasodilatation via upregulation of endothelial nitric oxide synthase activity:Biosci Biotechnol Biochem.2010
;74(5):1055-61.

監修 西沢 邦浩氏

早稲⽥⼤学卒業。⼩学館を経て、91年⽇経BP社⼊社。98年『⽇経ヘルス』創刊と同時に副編集長に着任。2005年より編集⻑。08年に『⽇経ヘルス プルミエ』を創刊し編集長を務める。2014年⽇経BP総研 マーケティング戦略研究所上席研究員、16年より同主席研究員。2018年4⽉より⽇経BP総合研究所 メディカル・ヘルスラボ客員研究員。ほかに、同志社⼤学⽣命医科学部委嘱講師、⽇本腎臓財団評議員などを務める。 著書に、 『⽇本⼈のための科学的に正しい⾷事術』(三笠書房) など。