高血圧の方の食事のポイント| 減塩にお酢を活用!

高血圧は長期間そのままにしておくと、メタボリックシンドロームや生活習慣病、動脈硬化による脳疾患や心臓病などを引き起こす可能性があります。高血圧が気になる方は、食塩のとりすぎに注意が必要です。毎日の食事の食塩量を見直しながら、美味しく食事を楽しめるように、お酢を活用してみませんか?ここでは、減塩のためのお酢の活用法や、おすすめの減塩レシピを紹介します。

高血圧とは

血管の中を流れる血液が、血管の内壁を押す力のことを「血圧」といいます。高血圧とは、この血圧が高い状態のこと。ただし、たまたま測った血圧が高いだけでは病気とは診断されません。繰り返し計測しても血圧が正常より高い場合に、高血圧症と診断されるのです。

血圧が高いかの基準は、心臓が収縮して血液を送り出すときの「最高血圧(収縮期血圧)」、心臓が収縮後に拡張するときの「最低血圧(拡張期血圧)」で決まります。高血圧の基準値は、診察室血圧値で最高血圧140/最低血圧90mmHg以上、家庭血圧値で最高血圧135/最低血圧85mmHg以上です。1)

高血圧状態が長期間続くと、動脈硬化を招く恐れがあり、脳卒中などの脳血管疾患や、大動脈瘤、心筋梗塞などの心臓病、腎疾患などを引き起こすことも。血圧が高めな人は、血圧を下げるのに効果的な生活習慣を心がけ、定期的な血圧測定をすることがおすすめです。

日々の血圧を管理するときに気をつけたいのが、季節による血圧の変動です。冬は寒さの影響で血圧の変動が大きくなりがち。朝起きたときに部屋が寒いと、急激に血圧が上昇します。

また高血圧気味の方は、夏も注意が必要です。汗をかく夏は水分不足になりやすく、血圧高めで動脈硬化を起こしていると、血管が詰まりやすい状態に。夏は意識的に水分補給をして、日々の血圧変動にも注意しましょう。

高血圧の食事・調理のポイント

高血圧の原因は、食生活だけでなく、肥満や精神的ストレス、過剰な飲酒、運動不足、喫煙などが関係しています。とくに食事面で気をつけたいのが、食塩のとりすぎです。

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、18歳以上の食塩の目標摂取量1日の目標食塩摂取量(食塩相当量として)は、男性7.5g未満、女性では6.5g未満と設定されていますが、(高血圧症の方の食塩摂取量は1日あたり6g未満が目標 2)日本人の1日あたりの平均食塩摂取量は男性10.8g、女性9.2g 3)でした。高血圧を防ぐためには、日常的な食塩のとりすぎを見直す必要があるのです。そこで今回は、美味しさは保ちながら減塩を叶える、食事と調理のポイントをご紹介します。

●かけるよりつける
しょうゆやソースなどの調味料は料理に直接「かける」より、小皿などに入れて料理を「つける」と食塩摂取量が抑えられます。

●汁物は1日1杯にする
汁物やスープ類は1杯につき1~2gの食塩が含まれているといわれ、毎食汁物を取り入れてしまうと1日の食塩摂取目標量のほとんどを占めてしまいます。汁物は1日1杯程度に。また同じ汁物でも具材をたくさん入れると、汁の量が減り減塩につながります。

●汁麺の汁は残す
ラーメンやうどんなどの麺類の汁には、多くの食塩が含まれています。汁をすべて残すだけでも、かなりの減塩に。

●うま味を生かす
かつおや昆布、しいたけなどのだしのうま味があると、薄味でも美味しく食べられます。ただし、市販の顆粒だしには食塩が含まれているものもあるので注意して。

●香味、辛味、酸味を生かす
調味料を使わず食事の味付けにメリハリをつけるには、ねぎやしょうが、にんにく、しそなどの香味野菜、スパイス、ハーブなどの辛味、レモンやゆず、お酢などの酸味をプラスするのもおすすめです。薄味でも香りや刺激が加わり、味が引き締まるので満足感がアップします。

●先に炒めることで風味、香ばしさをプラス
程よい焼き目や焦げ目をつけると、料理に香ばしさが加わります。最初に食材を炒めるなど、調理工程で工夫してみてください。

減塩にお酢を活用しましょう

健康のために調味料を減らしたものの、「なんだか物足りない…」と感じるなら、お酢を取り入れてみては? お酢の酸味には、塩味を引き立てる効果があることがわかっています。ある研究では、水に食塩を加えた食塩溶液にその人が感知できる最小濃度の半分量のお酢を加えたところ、食塩を感知する最小濃度が普段よりも低下。少量の酸味があることで、より少ない濃度でも塩味が強まることがわかったのです。4)

お酢は食塩を含まない調味料のため、食事に加えても食塩量が増えることはありません(合わせ酢、すし酢は除く)。いつもの食塩入り調味料をお酢に置きかえたり、お酢を加えて調味料を減らしたりと、お酢を活用することで減塩につながります。

例えば、餃子を食べるときには、しょうゆではなくお酢をつけたり、てりやきの味付けでお酢をプラスすると、酸味のおかげでしょうゆの量を減らしても美味しく仕上がります。他にも、ドレッシングや酢飯作りで「だし酢」を活用すると、だしのうま味とお酢の酸味の相乗効果で、塩やしょうゆなどの調味料を減らすことも可能です。減塩のためにも、是非お酢を上手に活用してみてください。

コラム:お酢摂取で血圧降下を確認

お酢を食事に取り入れることで、高めの血圧を下げる効果があることがわかっています。

試験では、血圧が高めの人に食酢約15ml(酢酸750mg)を含む飲料、または含まないプラセボ飲料(食酢の代わりに乳酸で味を似せた比較用の飲料) を1日1本(100ml)、10週間毎朝続けてとってもらったところ、食酢を含む飲料をとった多くの方で血圧は低下しました。(平均低下率:最高血圧6.5 %、最低血圧8.0 %)

*最高血圧:130-159mmHg、最低血圧:85-99mmHg

参考

血圧が高い人に!おすすめ減塩レシピ

セロリとさくらえびの酢炒め
食塩相当量 0.3g(1人分)

料理写真_セロリとさくらえびの酢炒め

鶏肉とれんこんの黒酢煮
食塩相当量 2.2g(1人分)

だし酢サラダ
食塩相当量 0.5g(1人分)

1) 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019

2) 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

3) 厚生労働省 「令和元年 国民健康・栄養調査」

4) Sakamoto,Mariko et al.食酢希釈液と食塩水溶液の閾値および食酢と食塩の共存が閾値に及ぼす影響.The Japan Society of Cookery Science 2009:42(3),p167-173

参考 厚生労働省「e-ヘルスネット 高血圧」

 


 監修/おいしい健康 管理栄養士