イメージ写真_しらすや青のり、すりごまなどをトッピングしたお酢がけ大根おろし

シンプルにかけるだけ。お酢の魅力とは|料理研究家武蔵裕子さん

お酢が好きな酢好きさんのインタビュー連載。「お酢でおいしさと健康を考える会」の賛同者として、お酢のおいしさや健康のことを一緒に考えてくださる武蔵裕子先生に、お酢にまつわるお話しを伺いました。



Q1 お酢を好きになったきっかけを教えてください。

父が酢っぱいものが大好きなので、献立には必ず酢のものが1品ありました。父は出身地の滋賀でよく使われる”どろ酢”と呼ばれるいわゆる酢みそをよく母にリクエストしていましたし、北海道や東北の郷土料理として知られる”氷頭なます”も好きでした。私も子ども心にコリコリしておいしいなぁと思って食べていた記憶があります。

そうは言っても私は酸っぱい味が『大好き!』『得意!』というほどではなかったのですが、生活のなかにいつのまにかお酢がなじんでいたという感じでしょうか。ただ、お酢は少し入れるだけでも料理がおいしく変身することがよくあります。特別に酢のものとして1品作らなくても、炒めものを甘酢炒めにしたり、さりげなく使うことをしてきたら、二人の息子もお酢好きになりましたね。

父は90歳を過ぎましたし、母ももう87歳になりますが、とても元気です。持病があったり、体調をくずしたりすることもありますが、基本的に食べるのが好き。なかでもお酢は大好きで、今でも健康に過ごせるのは毎日のお酢のおかげかもしれないわ、などと話しています

Q2 お気に入りのお酢料理はありますか。

「長いこと武蔵家の定番になっているのが、毎日朝食にいただいている『お酢がけ大根おろし』大根おろしにお酢を大さじ2程度かけて、しらす干しをたっぷり、黒すりごまや青のりをかけるだけのシンプルな小鉢です。香りづけ程度に少ししょうゆをかけたり、健康にいいと言われるえごま油やアマニ油、オリーブオイルなどを足したり、アレンジしながら毎朝食べています。

小鉢に大根おろしをこんもり盛って。しらすや青のり、すりごまなどをトッピング

我が家の朝食はごはんにみそ汁、干ものか卵焼きという典型的な和食と決まっていますが、和食はなんとなく塩分のとり過ぎが気になります。この大根おろしはお酢をたっぷり入れていただくので、減塩にひと役かっているのはまちがいないと思います。両親はこれを結婚当初から毎朝欠かさず食べていて、大根の汁とお酢までしっかり飲み干しています。

他には、お酢とオイルでサラダのドレッシングとして使ったり、みそと合わせて酢みそにしたり、はちみつやみりんと合わせて甘酢にしたり。考えてみたらお酢はいろいろな調味料と相性がいいですね。

だしがあれば三杯酢も簡単にできます。それを玉ねぎスライスやせん切りキャベツなどの野菜や、もずく、わかめといった海藻などと組み合わせていただくと、酸味もまろやかになり素材の味もよりおいしく感じられます」

最後にお酢をかけていただきます。しょうゆを少したらすことも。

Q3 お酢のどんなところが好きですか。

お酢を加えると後味がさっぱりするところがまず好きです。たとえば、きんぴらごぼうの仕上げにお酢をひとまわししたり、ポテトサラダを作るときにマッシュしたじゃがいもにまずまわしかけるとよりさっぱり食べられます。あじの干ものやたらこにも、ちょっぴりかけて食べてみてください。塩味の角が取れて、いつもと一味違うおいしさが楽しめますよ

また、まぐろの漬け丼を作るとき、白いごはんでもよいのですが、ごはんに酢を混ぜた簡単すし飯にすると、父は喜んで食べてくれます。砂糖や塩は使いませんが、さっぱり感が合うのでしょうね。

また、日持ちをよくしてくれるのもお酢のいいところ。らっきょう漬けやピクルスもそうですが、たとえば使いきれなかったゆでだこや、帆立、白身の刺身などを酢漬けにして、翌日の副菜に活用しています」

酢にみりんを加えて甘みをプラス。レンジ加熱したきのこを合わせた副菜です。

Q4 お酢やお酢料理の今後について。

お酢料理をつくろうとがんばりすぎず、冷やしトマトにかけるだけでも、パックのもずくにかけるだけでもいいんです。お酢の酸味が苦手な方は、はちみつや電子レンジ加熱してアルコールを飛ばしたみりんを混ぜて甘酢にすれば、まろやかで食べやすくなります。和食だけではなく、中華風、洋風のおかずにもアレンジは無限といって過言ではないですね。さらにだしを加えて三杯酢風にするのもいいですね。『水だし』を冷蔵庫にいつも作っておくと、酢の使い方も広がります。

また、酸っぱいものを1品、献立の中に組み込むと、酸味がアクセントになって、食が進むということもあるんじゃないかしら。どんぶりものも大好きでよく作りますが、小さな酢のものや酢漬けの副菜を加えると献立の味のバランスが整います。酸味は塩味を引き立てるので、どんぶりを薄味にしても満足できますし、健康を意識した献立になります。

いきなりたくさん使おうとしないで、副菜から始めてみるのがおすすめ。上手に酢を取り入れて、おいしく、健康な毎日を手に入れてくださいね」

武蔵先生がいつも冷蔵庫に常備している「水だし」。わざわざだしをとるのはめんどうでも、水に昆布と削り節を入れておくだけなので手間なしです。

撮影/馬場敬子
取材・文/久保木 薫

監修:武蔵裕子さん

旬の食材を活かした和食や基本を大切にした家庭料理を中心に、雑誌や書籍をはじめ、企業メニューの開発など多方面で活躍中。水だし、魚焼きグリルの調理アイデアやレシピでは、第一人者。近著に「フライパンひとつで、麺」(文化出版局)、「魚焼きグリルで万能調理!」(NHKまる得マガジン)、「『水だし』って、すごい!」(女子栄養大学出版部)ほか多数。