イメージ写真_揚げなすのサラダ

お酢健インタビュー vol.02 料理研究家 重信初江さん

お酢が好きな酢好きさんのインタビュー連載。「お酢」の本も出版されている料理研究家の重信初江さんに、お酢のエピソードを伺いました。

Q1 お酢を好きになったきっかけを教えてください。

子どもの頃からずーっとお酢好きです。子どもはお酢が苦手という話も聞きますが、私は昔から酸っぱいものが好きでした。冷蔵庫にはいつもピクルスや浅漬けがありますし、海外に行けば、その国ならではのお酢や酢漬けなどが気になってしまいます。

普段は、餃子はしょうゆを使わず、お酢とラー油、または豆板醤で食べますね。しょうゆラーメンにもお酢をかけます。お酢のない食卓なんて、考えられないかもしれません。そのおかげか、気がつけば「お酢レシピ」「すしレシピ」など、お酢を使った料理本を出す機会にも恵まれました。お酢好きとしては、なんとも嬉しいことです」

数多くの著書を出されている重信さん。その中でもお酢を使った料理のレシピ本は、重版を重ねるほど人気があります。

Q2 お気に入りのお酢料理はありますか。

「『揚げなすのサラダ』は本当によく作ります。友人たちが集まる宴会で出す料理の中でも、このサラダは大人気。たくさん作ってもすぐになくなってしまいます。もともとは、タイを訪れたときに出会った焼きなすのサラダをアレンジしたものです。本場ではかんきつ系の果汁で酸味をつけるようなのですが、日本へ帰ってきてお酢で試してみたところ、これがなかなかのおいしさに。以来、大のお気に入りです。

味のベースは米酢とナンプラー、砂糖だけ。エスニック風の味わいが揚げなすにしみ込み、赤玉ねぎ、桜えび、揚げにんにく、香菜がおいしさの引き立て役に。

もう一つは『野菜の浅漬け』です。便利さという点では、これに変わるお酢料理はないかもしれません。料理研究家の仕事をしていると、よく野菜が中途半端に余るんですが、ダメにしてしまうのはもったいないので、すぐに浅漬けにします。作り方は、野菜を切ってポリ袋に入れ、酢と昆布茶、塩を入れて混ぜ、しばらく置くだけ。アクがなければどんな野菜でも同じ調味料で作ることができます。分量は好みで加減すればOK。これが冷蔵庫に入っていると、パッと野菜が食べられるので、作っておいた自分に感謝したくなります。

キャベツ、きゅうり、赤パプリカを食べやすく切ってポリ袋に入れ、酢、昆布茶、塩を適量入れて混ぜ、空気を抜いて袋の口を結び、冷蔵庫へ。こうしておくと、野菜をおいしく保存できます。

料理というわけではありませんが、野菜をそのまま酢につけた『野菜の酢漬け』もよく作りますね。『赤玉ねぎの酢漬け』は、赤玉ねぎのスライスをそのまま酢漬けしたものですが、サラダやあえものにちょっと加えたいときに便利なんです。最近は、道の駅で見つけたハラペーニョをそのまま酢漬けにしてみたのですが、これが大正解! ちょっと辛味を効かせたいときに重宝しています」

Q3 お酢のどんなところが好きですか。

やはり、さっぱりしているところでしょうか。献立にお酢を使った料理がないなんて、あり得ません(笑)。冷蔵庫はいつも野菜のピクルスや浅漬けでいっぱいです。

ただ、お酢の酸味が好きではあるのですが、酸味が強ければ強いほどいいわけではありません。例えば、フランスの白ワインビネガーは、そのまま使うと私にはちょっと酸味が強すぎるので、米酢と合わせて少し酸味をやわらげます。お酢は種類によって味わいが違うので、いろいろ試したり、使い分けたりする楽しみもありますね。

隠し味的な使い方ができるのも、お酢のいいところかもしれません。きんぴらに少しお酢を入れるとさっぱりと食べられるので、私はよくバルサミコ酢を入れて作ります。甘辛いしょうゆ味とバルサミコ酢は相性がいいんですよ。また、お酢は料理の味を引き締めてくれるので、中華スープの仕上げにちょっと入れたりもします」

Q4 お酢やお酢料理の今後について。

「今の時代、みなさん忙しいですよね。だから『作り置きおかず』に頼ることが、ますます増えていくと思うんです。保存のことを考えたとき、お酢は欠かせない調味料なので、今後、お酢を使う機会がもっと多くなるのではないでしょうか

また、先ほどご紹介した『野菜の浅漬け』や『野菜の酢漬け』のように、さっと簡単にできるお酢の調理法が広まるとうれしいです。例えば、セロリの葉っぱは捨ててしまいがちですが、浅漬けにしておくとおいしく食べられます。こうした使い方はフードロスを減らすことにもつながるので、『とりあえず酢に漬けてみる』を試してみて欲しいですね

海外でさまざまなお酢やお酢料理と出会ってきた重信さん。旅の思い出に、その国ならではの器を持ち帰ることも多いそう。

撮影/広瀬貴子
取材・文/川端浩湖

監修:重信初江さん

料理研究家。料理研究家のアシスタントを経て独立。家庭にある身近な素材で作る簡単でおいしい毎日のおかずに定評がある。おふくろの味から本格エスニック料理まで幅広いメニューが人気で、雑誌やテレビなど多方面で活躍中。著書に『遅夜スープ』(宝島社)、『冬つまみ 寒い季節をおいしく過ごす酒の肴一二〇』(池田書店)など多数。