健康にいいと言われるお酢のさまざまな可能性

40年以上にわたりお酢の研究を続けてこられた東京農業大学名誉教授の小泉幸道先生。今回は、お酢に秘められたチカラについて、国内外で進められている研究についてうかがいました。

Q1 昔からお酢は健康にいいことが伝えられてきていますが、現在の研究でわかってきたことを教えてください。

「お酢にはさまざまな健康効果があることが、科学的に解明されてきています。肥満気味の方の内蔵脂肪の減少、高めの血圧や食後の血糖値上昇の緩和など、長期間にわたって摂り続けることで得られる効果があることもわかっていますが、お酢を摂取してすぐに期待できる効果もあります。

その一つは疲労回復効果です。夕方になってくると疲れを感じることがあるのはエネルギー源であるグリコーゲンが減少するためです。グリコーゲンを再補充すれば疲労は回復します※1。グリコーゲンの素となるのは糖分ですので、疲れた時に甘いものが欲しくなるのは理にかなっているといえます。この時、糖分と一緒にお酢を摂取すると、糖分だけを摂った場合よりも効率的にグリコーゲンが再補充されるというデータがあります※2。グリコーゲンの再補充効果がアップし、疲労回復につながるのです。

二つ目は食欲増進効果です。お酢の酸味と香りは食欲を刺激し、唾液の分泌を盛んにします。食べ物が喉を通りにくいときも、食事の最初にお酢を使った料理を食べたり、お酢を薄めて飲んだりすると、唾液がたくさん出て飲み込みやすくなります。

三つ目は夏バテ解消効果です。適量のお酢は食欲を増進するだけでなく、消化液の分泌もよくしてくれます※3。夏バテで食が進まないときや胃が疲れているようなときは、お酢を使った料理やお酢ドリンクが役に立つでしょう。

四つ目はカルシウム溶出効果です。お酢の主成分である酢酸にはミネラルを溶出させる効果があります※4。食材をお酢で煮るとカルシウムが煮汁に溶け出してくるため、この煮汁を摂れば、効率よくカルシウムを摂取することが可能です。

それから五つ目の便秘解消効果。お酢には胃酸の分泌を促す作用もあります※3。分泌された胃酸やお酢の成分そのものによって胃や腸が刺激されると、ぜん動運動が活発になります※5。その結果、便通がよくなり、便秘の改善につながるというわけです。

ただし、お酢さえ飲んでいれば便秘が治るというわけではありません。お酢の便秘解消効果は、規則正しい生活、適度な運動、食物繊維を十分に含んだバランスの良い食生活があった上ではじめて期待できるものと考えてください」

Q2 さまざまな効果が期待できるお酢。誰でも簡単においしく摂れる方法はないでしょうか。

「もっとも簡単なお酢の摂り方は、混ぜて飲むだけの酢ミルクです。グラスにリンゴ酢大さじ1、牛乳120ml、はちみつ大さじ1を入れて、よく混ぜれば出来上がりです。

牛乳にお酢を混ぜると、お酢の力で牛乳のカルシウムが吸収されやすくなり、簡単にカルシウムを摂取することができます。また、お酢を加えることによって牛乳のたんぱく質が変化しヨーグルトのようになるので、牛乳が苦手な方でも飲みやすいと思います。はちみつはお好みに合わせて、入れなくても構いません。冷たいものを飲むとおなかが痛くなるという方は、温めてもおいしく飲むことができます。

もう一つ、簡単でおいしいのはドライパイナップル酢です。甘みのあるドライパイナップルにお酢を合わせることで、ちょうど食べやすい甘酢っぱさになります。お酢に漬けたパイナップルがおいしく食べられるのはもちろんのこと、パイナップルを漬けていたお酢を薄めて飲むのもおすすめです。

ドライパイナップルは水分が飛んで栄養成分が凝縮されており、糖質をエネルギーに変換しやすくするビタミンB1や、グリコーゲンを回復させるクエン酸なども含まれています。ドライパイナップル酢にすれば糖とお酢を一緒に摂ることもできるので、疲れた時に最適です。

ドライパイナップルはスーパーでも手に入れることができます。生のものに比べて手軽に扱うことができ、保存が利くのも魅力です。食物繊維も豊富なため満腹感が得られやすく、腸内環境を整えてくれる効果も期待できますよ」

  • ※1 「筋グリコーゲン」厚生労働省 e-ヘルスネット
  • ※2 Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 11, 33-37(2001)
  • ※3 A.BICKEL: Arch.Verdanugskrankh, 46, 180 (1929)
  • ※4 深谷正裕, 古川勇次: New Food Industry, 40(12), 11(1998)
  • ※5 柳田藤治:「酢の機能性について」日本醸造協会誌1990年85巻3号 p.134-141

撮影/梁瀬岳志
文/木村恵理

東京農業大学名誉教授 小泉幸道先生

1973年東京農業大学農学部醸造学科卒業。1997年東京農業大学教授に就任。専門は発酵食品学、醸造学(酢)で、40年以上にわたり食酢の研究を行ってきた。お酢に関する著書、監修書は多数に上り、「お酢博士」としてテレビ等でも活躍中。

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