イメージ写真_糖尿病専門医_坂本昌也先生_インタビュー風景

新しい生活様式下における糖尿病予防~予防のための食生活とお酢の活用【前編】

昨今の感染症の流行は、糖尿病患者さんの病状や生活にどのような変化をもたらしているのでしょうか。糖尿病患者さんの置かれている状況から、予防のポイントを糖尿病専門医の坂本昌也先生にお話をうかがいました。

Q1 糖尿病の方は感染症にかかりやすいのでしょうか。

「糖尿病によって免疫に関する機能が低下することは、以前からいわれています(※1)。しかし糖尿病だからといって、現在、感染が拡大している新型コロナウイルス感染症にかかりやすいわけではないと考えられています。中国からの報告によれば、糖尿病患者さんの感染率と糖尿病ではない人たちの感染率に明らかな差は確認されていません。ただし、まだデータとして示されていないだけで、糖尿病患者さんのほうがかかりやすい可能性がないわけではありません。

日本に関しては、これは日本人の性格もあるのかもしれませんが、外出しないようにしたり、病院にかかるのをやめたりしている方も多いため、結果として感染者数が少なくなっていることも考えられます」

Q2 糖尿病の方が新型コロナウイルスに感染すると、重症化する危険性が高いのですか。

「糖尿病患者さんが新型コロナウイルスに感染した場合、重症化しやすいといわれています(※2)。また、糖尿病患者さんは心血管疾患や慢性腎臓病、肥満症などを抱えている方も多く、それらの合併症によって重症化リスクが高まる可能性もあります。

最新の日本のデータによると、男性、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満であることが新型コロナウイルス感染症重症化のリスクファクターとして報告されています(※3)。これらは全て血管に炎症を引き起こす因子ですので、新型コロナウイルス感染後に見られる血栓傾向は、これらが関連している可能性もあると個人的には考えています。

新型コロナウイルス感染症に関しては、まだ実態がわからない部分が多く、いま正しいと思っている情報が数カ月後には変化している可能性もあります。しばらくの間はあらゆることを想定して対処していくことが必要です。患者さんにも手洗いなどの地道にできる対策を続けていただきたいと思います」

Q3 新しい生活様式によって、糖尿病患者さんの状況に変化はありましたか。

イメージ写真_リモートワーク_自宅のデスクでノートパソコンを開いて作業する

「受診を控えるようになった方が多く、お薬の内服がきちんとできていない患者さんが増えました。1~2カ月前の平均血糖値を示すHbA1cは、30代から50代の一部の方で確実に上昇している印象があります。

生活にもさまざまな変化がありました。リモートワークで通勤ストレスが減ったものの、オン・オフがつけにくくなって残業が増えたり、通常業務以外の仕事が加わりストレスがかかったりして、睡眠不足になる方もいます。また今までのような旅行ができず、気分転換が図れないという方もいらっしゃいます。家族や仕事仲間など周囲が同時にストレスを抱えているというこれまで経験のなかった状況も、メンタル面に負担をかけています。さらには失業など、金銭的な問題によるストレスがある方もいます。

運動不足も深刻です。通勤、ジョギング、ジムなどでの運動が減った一方、自宅でネットやテレビを見る時間は増え、座って過ごす時間が増加しました。日本人は座っている時間が非常に長く、先進国7カ国を含む20カ国のうちで最長です(※4)。リモートワークによって座位時間がさらに伸び、運動量が減少しています」

Q4 生活の変化によって、新たに糖尿病を発症する方が増える可能性も高まっているのでしょうか。

「受診控えによって定期的な検査ができなくなると、糖尿病の予防も難しくなります。そのため、糖尿病の発症が増える可能性は高いといえるでしょう。いわゆるコロナ太りで体重が増えれば、脂質異常症や高血圧にもつながります。生活習慣病にかからないためにも、これを機に食事や運動を見直していただきたいと思います」

Q5 食生活についてはどのような変化を感じていらっしゃいますか。

イメージ写真_新鮮な野菜

「自宅での食事が多くなったことに関してはよい面もありますが、そうとはいえない面もあります。長時間のお酒や間食の増加などがその例です。こまめに買い物に行くことが減り、食材の宅配が増えれば、保存食などを必要以上に買いだめしがちになりますし、それらを賞味期限内に消費しようとすれば食べ過ぎにつながります。

毎食を自宅で作るのはなかなか難しいと思いますが、自宅で食べる際には、ひと工夫を加えるなどしてこだわってほしいですね。摂取量が減っている穀物を積極的に摂るようにしたり、体のことを考えていつも使っていた食材を別のものにしてみたり。その中でも、お酢は調味料として簡単に安価に手に入るものですので、食生活の中に取り入れていただき、何かしら「調子がいい」と感じられたら続けていかれるとよい思います。食事というのはずっと大切なものです。バランスのよい食生活を目指しながら、おいしくて続けやすいメニューを見つけていただけるといいのかなと思っています」

1)Carey, I.M.et al. Risk of Infection in Type 1 and Type 2 Diabetes Compared With the General Population: A Matched Cohort Study. Diabetes Care 41, 513-521, doi:10.2337/dc17-2131 (2018).
2)日本糖尿病学会「糖尿病と新型コロナウイルス感染症に関する Q&A(2020年6月26日 第一版)」
3)国立感染症研究所 感染症疫学センター「COVID-19の致命率と重症化リスク因子について」2020.8.18
4)スポーツ庁Web広報マガジン「DEOPORTARE」2019.10.11

撮影場所/国際医療福祉大学三田病院11階レストラン「オーブ」
撮影/梁瀬 岳志
文/木村 恵理

国際医療福祉大学三田病院 内科部長・地域連携部長 国際医療福祉大学医学部教授 医師・医学博士 坂本昌也先生

東京慈恵会医科大学卒。糖尿病、脂質異常症、高血圧といった生活習慣病に対し、対話・共感を大切にした治療を行っている。日本糖尿病学会認定指導医・糖尿病専門医、日本内分泌学会認定指導医・内分泌代謝科専門医、日本高血圧学会認定指導医・高血圧専門医、日本内科学会認定総合内科専門医。著書に「最強の医師団が教える長生きできる方法」(アスコム)など。

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