

世界のうまずっぱい料理|アジア編
新しいおいしさに出会う「世界のうまずっぱい料理」アジア編のご紹介です。中華人民共和国、タイ王国、インドそしてトルコ共和国。お酢を使った「アジアの郷土料理」をおたのしみください。
中華人民共和国|糖醋肉塊(タンツゥローカイ)



世界四大文明のひとつ黄河文明が栄え、数々の王朝が盛衰していった中国。長い歴史が育んだその独特な食文化は、世界三大料理のひとつにも数えられています。
タンツゥローカイとは酢豚のこと。広東料理の名菜として日本でもなじみのある料理。中国では「古老肉」と呼ぶこともあります。
下味をつけた豚肉に衣をつけて揚げ、甘酸っぱいあんをからませて食べます。豚肉に下味と薄い衣をつけて揚げることで旨味が肉にとどまり、あんのとろみと揚げたてのカリッとした食感を一緒に味わえるおいしい料理です。
また、黒酢を使うことで熟成感のあるまろやかさが加わって格別の味に。酢が豚肉を柔らかくし、また豚肉に多いビタミンB1と酢に含まれる酢酸は疲労回復の相乗効果があると言われています。
豚肉はロースやヒレ肉がおすすめです。トッピングにはさっぱりと白ねぎの千切り(白髪ねぎ)を添えて。


- 豚肉……300g(1.5cm角くらいにカット)
- 塩……適量
- こしょう……少々
- 紹興酒……少々
- 片栗粉……適量+大さじ1 ※粉で使用するもののほか、たれ用に大さじ1分を水大さじ4で溶いておく
- 卵……1個(割りほぐして溶いておく)
- 植物油……適量(揚げ油)
- 黒酢……大さじ4
- きび砂糖……大さじ3~4
- しょうゆ……大さじ3
- にんにく……小さじ1/4(みじん切り)
- しょうが……小さじ1/4(みじん切り)
- 白ねぎ……4cm(千切り)



豚肉に塩、こしょう、紹興酒をまぶして15分ほど置いておく。


天ぷら鍋やフライヤーで豚肉を揚げる。まず片栗粉をつけ、溶き卵にくぐらせ、再び片栗粉をつけてはたき、160度に熱した植物油で時間をかけてきつね色になるまで揚げる。一度油から引きあげて油を切り、今度は180度で二度揚げする。


ボウルに黒酢、きび砂糖、しょうゆを入れて混ぜておく。


フライパンに油をひき、にんにく、しょうがを香り立つまで炒め、[3]のたれを入れて沸騰させる。


[4]に水で溶いた片栗粉を入れてとろみをつける。揚げた豚肉に対して多めにたれを作っておく。必要なら水を足す。


[5]に揚げた豚肉を入れて素早くからめる。

[6]を盛り付ける。白ねぎの千切りをトッピングして、できあがり。
タイ王国|プラー・パット・プリィアウ・ワーン



タイは、東南アジアで唯一、欧米列強の植民地化を免れた王国。その礎は13世紀のスコータイ王朝より築かれました。仏教徒が多く、また暑い気候から、菌の増殖の抑制や発汗作用を促すとうがらしを使った辛い料理で知られています。
プラー・パット・プリィアウ・ワーンは、中国・湖南省の料理の影響を受けたといわれるタイの揚げ魚の甘酢ソースがけ。甘酢ソースに少量のとうがらしやナンプラー(魚醤)が加わるところがタイらしく、より奥行きのある味が楽しめます。辛さは控えめです。
魚は白身の鯛のほかにマナガツオ、また切り身のほか、丸ごとを使うこともあります。揚げたての魚と甘酢ソースの相性は抜群です。酢には魚の臭みを消す効果もあります。
甘酢ソースは、魚をポテトなどに代用してベジタリアンの方にも提供できます。トッピングにはパクチー(コリアンダーの葉)や青ねぎを。


- 白身魚の切り身……200g
- 小麦粉……適量
- 植物油……適量
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- [ソース]
- 植物油……大さじ1
- にんにく……1かけ(みじん切り)
- とうがらし(鷹の爪)……1本(みじん切り)
- りんご酢……大さじ1
- ケチャップ……大さじ2
- ナンプラー……小さじ1
- 水……大さじ2
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- ピーマン(緑、赤、黄のうち2色以上)……各1/2個(角切り)
- たまねぎ……小1/2個(角切り)
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- [トッピング]
- 青ねぎまたはパクチー(両方でもよい)……適量(みじん切り)
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魚に小麦粉をまぶしてはたき、きつね色になるまで揚げる。油分を切っておく。


ソースを作る。フライパンに植物油を入れ、にんにくを香り立つまで炒め、とうがらしを加えてさらに軽く炒める。


[2]にりんご酢、ケチャップ、ナンプラー、水を加えて混ぜ、ピーマンとたまねぎを炒める。

[1]の魚をお皿に盛り、[3]のソースをかける。青ねぎまたはパクチーを飾ってできあがり。
インド|ポーク・ビンダルー



インド南西部の海岸沿いにあるゴアは、16世紀から20世紀半ばまで400年以上もポルトガル領だった歴史を持つ地域。今もキリスト教徒が多かったり、また飲酒や豚肉の消費などポルトガルの食文化を残すインドでは異色の土地です。
ポーク・ビンダルーは、肉を赤ワインでマリネしてにんにくと調理するポルトガルの「カルネ・デ・ビーニャ・ダリョス」をもとにゴアで誕生した、ヨーロッパとインドの折衷料理。
インドのスパイスと、ポルトガル人がアメリカ大陸から伝えたとうがらしを使う、いわゆるカレーの一種なのですが、赤ワイン代わりにビネガーで豚肉をマリネするため、独特なおいしい酸味が口の中に広がります。また酢に漬けることで肉が柔らかくなる効果を発揮します。
豚肉のほか牛肉や鶏肉、羊肉、またインドに多いベジタリアン向けのじゃがいもなどの野菜を使ったビンダルーもあります。


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- [ペースト]
- カレー粉……大さじ1と1/2
- パプリカ粉……大さじ1
- とうがらし粉……小さじ1/2~1
- にんにく……小さじ1(すりおろす)
- しょうが……小さじ1(すりおろす)
- 赤ワインビネガー(りんご酢でも代用可)……大さじ2
- 梅干しのはちみつ漬け※タマリンドの代用……1個(種を取る)
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- 豚肉(角切り)……300g
- 塩……適量
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- 植物油……大さじ2
- たまねぎ……小1個(みじん切り)
- にんにく……1かけ(みじん切り)
- 水……400ml
- きび砂糖……小さじ1と1/2
- とうがらし粉……少々(お好みで)
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ペーストを作る。<ペースト>の材料をミキサーまたはミルサーに入れ、滑らかにする。必要であれば水を少々加える。


豚肉に塩少々をまぶし、[1]と一緒にフリーザーバッグに入れ、よく混ぜ合わせる。もみ込みながらマリネし、冷蔵庫に一晩置く。


鍋に植物油をひき、たまねぎを色づくまで炒める。にんにくを加えて香り立たせ、[2]の豚肉を加えて炒め、豚肉をマリネしたペーストの残りと水を加えて豚肉が柔らかくなるまで煮込む。

きび砂糖、塩を加えて調味し、好みでとうがらし粉を加える。深皿に盛ってできあがり。
トルコ共和国|ピヤズ



トルコは、遊牧民のテュルク系民族が礎を築いた国。13世紀から600年以上続いたオスマン帝国時代に領土を拡大してイスラム教徒主体の多民族国家となり、以降、その時代の食の遺産が世界三大料理のひとつに数えられる所以にもなりました。
ピヤズは、豆とたまねぎ、パセリ、トマトなどの野菜を酢やオリーブオイルなどのドレッシングで和えたトルコのヘルシーなサラダです。
一般的には前菜として出されますが、トルコの地域によっては、ケバブの付け合わせにしたり、豆を多めに入れるとしっかりお腹にたまることからメインディッシュとして提供されることもあります。
使用する豆は白いんげん豆が主流ですが、ひよこ豆やえんどう豆、そら豆などを使ってもおいしく作れます。
酢を加えることで、サラダのもう一つの主役たまねぎの味や香りがまろやかになります。白ワインビネガーやりんご酢がおすすめです。


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- 白いんげん豆(ゆでたもの。缶詰)……200g
- 赤たまねぎ……1/4個(薄切り)
- トマト……1個(みじん切り)
- パセリ……大さじ1(みじん切り)
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- [ドレッシング]
- オリーブオイル……大さじ1
- 塩……少々
- 黒こしょう……少々
- りんご酢、または白ワインビネガー……大さじ1
- とうがらし粉……ひとつまみ
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- 黒オリーブの実(種なし)……10粒
- ゆでたまご……1個(縦1/4にカット)
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ボウルに白いんげん豆、赤たまねぎ、トマト、パセリを入れてざっくり混ぜる。


ドレッシングの材料をボウルに入れてよく混ぜる。


[1]に[2]のドレッシングを入れて軽く混ぜる。

[3]をお皿に盛り、黒オリーブの実とカットしたゆでたまごを飾ってできあがり。

監修:お酢博士 赤野裕文さん
山口県出身。広島大学工学部醗酵工学科卒業。1979年、㈱中埜酢店(=ミツカングループの以前の社名)に入社し、食酢の基礎研究やマーケティング、商品開発など食酢に関わるさまざまな分野を担当。2016年に㈱Mizkanを定年退職し、現在は食酢エキスパート社員として食酢の啓蒙活動を行っている。

監修:各国・郷土料理研究家 青木ゆり子さん
e-food.jp代表、各国・郷土料理研究家、世界の料理レシピ・ライブラリー&サロン運営。
2000年に世界の料理総合情報サイトe-food.jpを創設。エッセイスト、レシピ開発、食文化講師、シェフ等として活動。世界各地で取材した郷土料理の魅力を広め、食を通じた国際理解の啓蒙を目指す。2020年内閣官房ホストタウン事業 郷土料理講師拝命。主な著書「世界の郷土料理辞典」(誠文堂新光社)2020年
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