イメージ写真_広島修道大学教授_多山賢二先生_インタビュー風景

お酢のダイエットパワー【前編】

お酢が持つさまざまなチカラやその応用に関する研究などに携わってこられた広島修道大学教授の多山賢二先生に、お酢のダイエットパワーについてお話を伺いました。

Q1 肥満気味の方がお酢を飲んだ場合のダイエットパワーについて教えてください。

「BMI(Body Mass Index)が25から30の男女175名が参加した試験があります(*1)。BMIというのは体重(kg)を身長(m)の2乗で割った値で、日本肥満学会の定めた基準では25以上が『肥満』に分類されます。

この試験では、参加者を1日あたり15mlのお酢を含む飲料を飲むグループ、30mlのお酢を含む飲料を飲むグループ、お酢を含まない飲料を飲むグループの3グループに分け、それぞれ500mlの飲料を朝食後と夕食後に分けて250mlずつ、12週間飲んでもらいました。試験はダブルブラインド法で実施し、参加者も担当医師も誰が何を飲んでいるか分からない形で行われました」

Q2 お酢を飲んだグループには、どのような効果があったのでしょうか。

「お酢を含む飲料を飲んだ2つのグループは、お酢を含まない飲料を飲んだグループと比べ、体重、内臓脂肪面積、BMI、腹囲、血中中性脂肪値がそれぞれ低下したことが確認されました。

例えば体重は、毎日30mlのお酢を飲んだグループで平均1.9kg、15mlのグループで平均1.2kgの減少が認められました。

ただしこの数字は平均値ですので、30mlのお酢を飲んだ人全員が1.9kg減ったというわけではありません。もっと減った人もいれば全く減らなかった人もいる中で、変化した値の平均をとったところ、1.9kgの減少という結果になったということです。

データから私が推測すると、お酢を含む飲料を摂取したグループでは、約半数の人たちがダイエット効果を実感できたのではないかと考えられます。

この研究で特に興味深いのは、お酢の継続摂取によって皮下脂肪の減少もした点です。明らかな皮下脂肪の減少が確認できたのは30mlのお酢を飲んだグループだけでしたが、内臓脂肪の減少が認められる食品は他にもあるものの、皮下脂肪の減少まで確認されている食品というのは少ないのではないでしょうか」

Q3 肥満気味の方が継続的にお酢を飲むと、体重や内臓脂肪が減少するのはなぜですか。

イメージ写真_メタボの男の人が自分のお腹を手でおさえる

「そのメカニズムは動物を使った実験である程度解明されています(*2)。お酢の主成分である酢酸が継続的に体内に入ると、肝臓で脂肪の合成を抑える上に、脂肪酸の燃焼を促進させることにもつながる“鍵となる酵素”が活性化されます。筋肉でも同様な現象が確認されています。

また、酢酸は食べ物のエネルギーを熱に変えやすくし、エネルギー消費量を高めることも証明されています。さらに、酢酸がブドウ糖や脂肪酸の脂肪細胞への取り込みを防ぎ、脂肪の蓄積を抑えて脂肪細胞が大きくなるのを抑制する作用を持つことも示されています。

以上のような働きによって、脂肪が燃焼されやすくなったり蓄積されにくくなったりするわけですが、その総合的な結果が体重や内臓脂肪の減少という形で表れているのだと考えられます

肥満に対する効果を期待する場合は、食事の際にお酢を摂る必要があります。食べたものが体内で脂肪となっていくのを抑えるお酢の働きは、空腹時に摂取してもあまり期待できません。内臓脂肪の低下や体重の減少が確認された試験では朝食と夕食の際にお酢を飲んでいますので、この方法がよいのではないかと思います。1日2回が難しい場合は、食べる量が多い夕食時にお酢を摂るとよいでしょう」

Q4 肥満ではない人でも、お酢を飲むと体重が減るのでしょうか。

「最初に紹介した試験の結果は、BMIが25から30の肥満の人を対象としたもので、BMIが25未満の人についてはデータがなく確認されていません。他の試験の結果などから推測すると、ゆるやかに減る人がいる可能性はありますが、肥満の人のように大きな減少はみられず、効果を実感する人の割合もかなり下がるはずです。

ただ、脂肪細胞の肥大化を抑えるというメカニズムからすると、お酢の継続摂取によって健康な人の体重増加を抑え肥満を予防する効果が得られる可能性があるかもしれません。もちろん、お酢を飲んでさえいればいくら食べても太らないというわけではありませんので、その点は注意してください。体重の減少が確認された試験でも、参加者は食事量をしっかり管理した上でお酢を摂取しています。

一方で、健康な人が毎日お酢を摂り続けても異常な検査値や症状はみられず、医学的な問題はないことが確認されています。お酢は数千年以上にわたって使用され続けており、普通に摂取する分には医薬品のような副作用の心配もないため、日常生活の中で活用しやすい食品の一つです。比較的安価で簡単に手に入れることができ、保存性が高いというメリットもあります。1日15mlまたは30mlのお酢を毎日継続して摂り、健康維持に役立てていただきたいと思います」

参考文献:
1)「Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry」 Vol.73,1837-1843,2009
2)「Journal of Agricultural and Food Chemistry」 Vol.57,5982−5986,2009

撮影/上内 かなえ
文/木村 恵理

広島修道大学 健康科学部 教授 多山賢二先生

1980年山口大学大学院農学研究科農芸化学専攻修士課程修了、1993年東京大学大学院にて博士号(農学)を取得。食品企業の研究員、短期大学の教授を経て、現職。主な研究テーマは酢酸菌の応用や食材の物性解析で、食酢および酢酸菌に関する著書・論文・特許・学会発表は多数。2007年日本農芸化学会技術賞受賞。NHK―BSプレミアムなどメディアでも活躍中。

記事の一覧を見る